お兄ちゃんと不倫しました (04)

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 というわけでお兄ちゃんとラブホテルに行って、ベッドの上でおしゃべりしたのです。

 ベッドの上でおしゃべりした、というのは文字通りの意味です。セックスしましたという意味の修辞的表現じゃないです。

 繰り返しセックスしてたあの夏のことを思い出しながら、近況を話したんですよ。

 まあ、夫がいる身でありながらラブホテルのベッドで別の男性と肩を寄せ合っているというのは、ドキドキしましたけど。

 お兄ちゃんと出会ってから十五年近くたってますから、けっこうな歳の大人になったいま、振り返ってみると感慨深いものがありました。

 運命には波のようなものがあって、いい時もあれば悪い時もあります。わたしが病んでしまうのも波があるみたい。バイオリズムってやつでしょうか。九年周期とか十二年周期とか言うじゃないですか。

 いまは精神的に落ち着いてる感じがしています。やさしい旦那さんもいるし。

 旦那さんにはわたしの過去を打ち明けたいですけど、いまはまだ無理です。三十歳まで童貞だった男の人は魔法が使えるようになるって言いますけど、うちの旦那さんは魔法は使えないみたいです。旦那さんにはほかの女性とのセックスを経験してほしいんですよね。不倫してくれるまで、打ち明ける勇気が出ないです。

 結婚する前に、友達に頼んで旦那さんを誘惑してもらったことがあります。うまくいかなかったです。高校のとき、童貞彼氏に友達を何人か抱かせてあげたことがあるんだけどな。将来、旦那さんが不倫しても、わたしはぜんぶ許します。というか、不倫させてあげたい。

 これまで、不倫相手がわたしに本気になっちゃって、奥さんと別れてしまったことが何回かあります。不倫って、男の人は奥さんがいちばん大事だから、いずれ奥さんのところに戻るし、もしバレて夫婦仲が壊れそうになっても、奥さんが許してあげれば再構築できるけど、男の人が不倫相手を愛してしまって浮気が本気になっちゃうこともあるんだよね。体の相性がピッタリ合ってしまうと、まず男は本気になっちゃいます。もし、うちの旦那さんがそういうことになっても、わたしは受け入れます。

 恭子さんはそうじゃないだろうな。

 もしお兄ちゃんが不倫したら許さないだろうし、怒りまくってハゲるかもね。まして相手に本気になっちゃったりしたら、発狂して人間じゃなくなるんじゃないかな。バリキャリ女は包容力ないからな。

 というようなことを考えていたら、

「ねえ、お兄ちゃん。キスだけでもしてみる?」

 と、口走ってしまいました。

 お兄ちゃんはちょっとその気になりかけたけど、

「奈々は新婚だろ?」

「キスしても不倫にはならないよ」

 と、自重してるお兄ちゃんをさらに誘惑すると、ふたりとも固まってしまいました。

 恥ずかしくなって、うつむいたままお兄ちゃんに体をくっつけていると、ものすごくドキドキしました。お兄ちゃんも同じくらいドキドキしてます。体が触れ合ってるので、互いの鼓動が伝わってしまうんです。

 そっとお兄ちゃんを見上げると、お兄ちゃんも恥ずかしそうにわたしを見つめてきました。

 緊張感に耐えられなくなって、お兄ちゃんの胸に顔をうずめたら、お兄ちゃんは肩を抱いて背中をぽんぽんしてくれました。

「お兄ちゃんと出会えてよかった」

 涙声でつぶやきました。

「大好きなお兄ちゃん」

 ラブホテルに行ったけど、何も起きませんでした。

 わたしは婚約したときから、旦那さん以外の人とはエッチなことをしていません。

 ヤリマンは卒業したんです。

 それからの数日は、スマホのメッセージで送られてくるお兄ちゃんの愚痴を聞いてあげてました。年末に向けて新型コロナの新規感染者が急に増え始めて、世間的にもこれはちょっとマズいことになるんじゃね、という雰囲気が出てきた頃ですね。恭子さんは相変わらずカリカリしてるみたいでした。お兄ちゃんも、今年の年末年始は帰省はできないな、初詣も行けないな、などとボヤいてました。

 そんなある日、お兄ちゃんからとんでもないメッセージが来ました。

「恭子が子供を連れて実家に帰ってしまったから、今日の夜ごはんは適当に済ました」

 って、なんだそりゃ!

 お兄ちゃんが年末の帰省はできないって悩んでるときに、なに自分だけ帰省してるんだ、あの女は。ていうか、まさか別居することにしたとかじゃないだろーな!

 そこまで夫婦の関係が険悪になっているとは。

 わたしとラブホテルに行ったことが原因かもしれないという考えはまったく浮かびませんでした。だって、何もしてないもん。

 それで翌朝すぐにお兄ちゃんの家に向かいました。

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