第1話 放課後のプリンセス (05)

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お父さんとデートするならショッピングでしょ、というわけで、同じショッピングモールの中にあるお店を巡ることにした。

最初のショップはややクラシックな感じの可愛らしい服が特徴のお店だった。フリルやレースを使った女の子っぽい服がならんでいた。

チュニックにペチスカートにジャケット、ワンピースにボレロ、あれこれ試着しては村岡さんに見せつけて、かわいさをアピールした。

村岡さんは本当のお父さんだったらたぶんそうするだろう、ちょっと困ったようなあいまいな微笑みを浮かべて、どれもよく似合うよ、と言った。

デートの費用はぜんぶ村岡さんが払うという約束だ。多少のおねだりは覚悟しているだろう。だけど、あたしは洋服を買ってほしいわけじゃない。

あたしの目的は、村岡さんを誘惑してあたしの体を買わせること。あたしが買ってほしいのはあたし自身だ。

どうすれば誘惑できるのかわからないけど、やっぱりスキンシップだろうな。一度はあたしを買おうとしたのだから、寂しさにつけこんで体でせまれば落ちるはず。

あたしは村岡さんと腕を組んで歩いた。お父さんが好きな女の子なら当然そうする。

村岡さんのために紳士服のお店にも寄ってみた。本当の娘だったらそうするように、カジュアルウェアやネクタイを選んであげた。村岡さんは照れくさそうだったけど、まんざらでもないようだった。

「欲しい服があったら買ってあげるよ」

そう言われて、あたしはくすくす笑った。

「気をつけて。援助交際する子にそんなこと言うとたかられちゃうよ」

「稼いだお金を何に使ってるの? ブランド物の洋服とかバッグ?」

「ブランドにはあんまり興味ない。あたし、自分で服を作るのが趣味だから。きょう着てきたこの制服も、あたしが作ったんだよ」

「え!? そうなの? へえ、それはすごいじゃないか。とても手作りには見えないよ。将来はそういう方向を目指してるの? ファッションデザイナーとか」

あたしは苦笑した。立派な夢があるんだね、援助交際なんてバカなことはやめた方がいいよ、いまならまだ間に合う。大人の言いそうなセリフだ。

「あたしはお嫁さんになりたい。世界にたったひとりの運命の王子さまに嫁ぐのが、あたしの夢。まあ、それが実現の難しい夢だってのはわかってるけどね、ふふっ」

男の人が女の子の買い物に付き合わされるのは退屈なんじゃないかと思うけど、村岡さんは文句ひとつ言わなかった。村岡さんはすごく優しくて紳士的で、あたしは思いっきり甘えさせてもらった。村岡さんもあたしに甘えられるのを望んでいたと思う。

村岡さんが文句を言ったのは最後のショップに入ろうとしたときだ。

「ここに入らなきゃダメかい?」

「心配いらないよ、お父さん。カップルで来るお客さんだっているし、試着室にだっていっしょに入れるよ」

あたしは渋る村岡さんの腕にしがみつくようにして、ランジェリーショップに連れ込んだ。スキンシップ作戦だ。むふふ。

腕を組んだまま、カラフルな下着を見てまわる。村岡さんは目のやり場がなくてそわそわしている。

「ねえ、お父さん。このブラジャーかわいいと思わない?」

「そ、そうだね」

「もう、お父さんってばぁ。ちゃんと見てよ。このブラ、あたしに似合うかな?」

「ああ、うん、そうだな。似合うと思うよ」

「じゃあ、試着してみよっと」

あたしは店員さんに試着をお願いして、嫌がる村岡さんの手を引いてフィッティングルームへと向かった。あたしと店員さんが中に入ってカーテンを閉めると、村岡さんはランジェリーショップの店内にひとり取り残されることになった。助けを求めるような目であたしを見たけど、がんばってもらうしかない。

「優しそうなお父様ですね」

「世界一すてきなお父さんです。お父さんのことが大好き」

店員さんの言葉に、外にいる村岡さんにも聞こえるように答えた。

あたしはBカップの発展途上だ。男の人に揉んでもらってもなかなか大きくならない。小ぶりなおっぱいが好きな人も多いけど、やっぱりもうすこし欲しいな。

「あのぉ、お父さんにも見てもらいたいんですけど……」

ブラジャーをつけてもらってから、もじもじしながら店員さんに告げた。店員さんはにっこり笑って出ていき、かわりに、店員さんにうながされて村岡さんが入ってきた。

「似合うかどうか見て、お父さん」

「あ、ああ」

村岡さんも恥ずかしそうだけど、あたしも緊張してる。

スカートのファスナーをおろしてホックをはずした。村岡さんに制止するすきをあたえず、すばやくスカートを脱ぐ。白のレースのパンツがあらわになった。

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