快感ストーム(04)

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 統和とメイが恋人同士のように連れ立って部屋を出ていくのを、亜里沙はマッサージを受けながら横目でぼんやりとながめていた。

(あの二人は普段からよくセックスをしている。セックスプレイヤーなら普通のことだ。嫉妬するようなことじゃない)

 胸の奥のわだかまりを意識しながら、亜里沙は自分に言い聞かせた。

 亜里沙は二十四歳で、アスリートとしての今後のキャリアを考える年齢にさしかかっていた。日本のスポーツセックスの女子プレイヤーは二十五歳までに半数が引退する。若さや外見の美しさは直接スコアには関係しないとはいえ、ファンの人気には影響する。年齢と経験を重ねることでセックス体験が熟していくのも確かで、初期のプレイヤーには三十代半ばを過ぎていまだ現役の女性もいるのだが、自分がそうなりたいのかと問われれば、わからないというのが正直なところだ。

 まして、いま亜里沙は伸び悩みを感じている。スコアが伸びないままずるずるとつづけても、すぐに後輩プレイヤーたちに追い抜かれて、そのまま埋もれてしまうのではないかと不安になるのだ。

 特に久野メイは才能にあふれたプレイヤーだ。高校を卒業するまで処女だったというが、オナニーは子供の頃からしていたそうで、まずは女子オナニーで頭角を現したあと、男女ペアでも大物の片鱗を見せはじめていた。統和とメイのセックスを体験再生したことは何度もある。ポルチオの開発はまだ十分ではないが、統和が練習相手なら二十歳になる前に大きく開花するだろうと思われた。

 それにメイは美少女だった。デビュー直後から写真集や体験ビデオがベストセラーになり、男女ともファンが多い。処女喪失からメイの体が徐々に開発されてセックスの感度が向上していく、その過程をレセプターレゾナンスで体験できることから、彼女の成長を見守る「メイおじ」と呼ばれる熱狂的な男性ファンがついているのも強みだ。

 亜里沙はそれほど美女というわけではない。メイが近隣の学校でも噂になるほどの美人だとすれば、亜里沙はクラスで三番目くらいに可愛い子といったところだ。

 子供の頃からセックスに興味を持ち、中学ではクラスの男子全員とセックスした。当時生まれたばかりのスポーツセックスを知り、セックスプレイヤーを志したのも当然だった。女子高に進んだのは、近隣でスポーツセックスの部活があるのがそこだけだったからだ。未成年のセックスはもちろん認められていないが、オナニーなら高校生でも行うことができ、女子オナニーの全国大会で優勝したこともある。そして実業団入りして統和と出会った。男女ペアのトッププレイヤーとなって夢を実現した亜里沙だが、同時に自分の限界も感じるようになっていった。不安はどんどん大きくなる。

「統和きゅんとメイちゃんのことが気になるのかしら?」

 紅林コーチがおだやかな声で尋ねた。

「統和は一流のプレイヤーですよ。競技前に射精してしまうようなヘマはしないでしょう。メイちゃんだって心得ています」

「アタシが言ってるのはそういうことじゃないのよ。セックスはほかのスポーツよりメンタルの影響が大きいものよ。チームのプレイヤーのメンタルケアもコーチの仕事」

 亜里沙はどう答えるかすこし考え込んだ。

 紅林コーチは童顔でぽっちゃりした愛嬌のある男性で、チームの誰からも好かれていた。バイセクシャルでオナニストの紅林コーチはペアセックスの経験はほとんどないらしいが、妄想力は無限大で優秀なコーチだ。亜里沙は彼のオナニーを体験したことがある。寸止めを繰り返した末の射精感はクリイキよりもはるかに強烈で、苦しくなるほどの快感だった。しかし人前でオナニーをするのは恥ずかしいからと、プレイヤーではなくコーチの道を選んのだという。

「統和はペアを組んでいるパートナーだけれど、それはアスリートとしての関係です。わたしだってほかの男性プレイヤーとセックスしてます。統和のことは信頼してますし、優れたセックスアーティストとして尊敬もしてます。嫉妬だなんて……」

 嫉妬しているのだと内心では気づいていた。ただし、どうして嫉妬を覚えるのかはわからない。たぶん、メイが才能にあふれた若手で人気のある美少女だからだろう。実力のある後輩に嫉妬だなんて、みっともない話だ。

 しかし、きょうはオリンピックの本戦。金メダルがかかっている。みっともないで済む話ではなかった。猛追してくる後輩への嫉妬を断ち切る方法なんてひとつしかない。ハイスコアで自分の実力を証明することだ。

(いまは競技に集中しなくちゃ……)

 そんな亜里沙を紅林コーチはすべてを見通すような目で優しく見つめた。

 やがて、本戦の開始時刻になった。

 日本チームの控え室ではモニターにNHKの実況ライブ中継が映し出されていた。日本で放送されているものがネットでも配信されているのだ。小林アナウンサーとプロセックスアーティストで解説の豊川という女性が競技の説明をしていた。

 本戦はベルサイユ宮殿の二階にある鏡の間で行われる。幅10メートルの鏡張りの廊下に巨大な円形の回転ベッドが設置され、そのまわりを四台のカメラが取り囲んでいた。さらにプレイヤーにアップで迫ることができるクレーンカメラもスタンバイしている。

 最初に体験を行うのはドイツのペアだ。

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