ケータイをポケットにしまい、かわりに巾着から十センチほどの棒状の器具を取り出した。色気のないマットブラックで、片方の端にボタンスイッチがついているだけ。知らない人が見ても何なのかわからないと思う。スティックローターだ。
ブレザーを脱いでベッドの上で横向きになり、制服のミニスカートの中に手を入れた。指先でボタンを押し込むと、静かな音を立ててローターが振動をはじめた。
パンツの上からそっと股間に触れさせた。
ふうっ、と吐息をもらす。
性の快感。そこはあたしの住む世界。いやなことがあっても、そこに逃げ込めば癒される。だから、ローターはいつも持ち歩いてるんだ。
学校でこっそりオナニーすることもよくある。
誰かに見られるかもしれないというスリルはくせになる。
ローターの腹でアソコをこすっていると、だんだん興奮が高まってきた。
ブラウスのボタンをはずして、ブラジャーごしに乳房を揉む。
男の人に愛撫されてるところを空想する。
拓ちゃん……。
ブラジャーを上にずらして、硬くなってきた乳首に触れる。
クリトリスからアソコにかけてローターを上下させ、もっともっと気持ちを高める。
足の付根をなでるように刺激して、下半身全体の感度をあげる。
アソコが濡れ始めてきたら、パンツをずり下げる。
愛液が垂れる冷たい感触。
ぬるぬるのアソコにローターを押し付ける。
「はぁう……」
声がもれてしまい、口元を手で押さえた。
アソコにじわぁっと快感が広がっていく。
「拓ちゃん……、好き……」
空想の中で拓ちゃんが抱きしめてくれる。
――『沙希、お前が好きだ』
あの日、言ってくれた言葉。
感情がたかぶり、興奮がはげしくなる。
あたしは舌を伸ばして、実際にはいない拓ちゃんとキスをした。舌をくにくにと動かして、拓ちゃんの舌と絡め合う感覚を求めた。
ほんとは拓ちゃんにキスされたい。拓ちゃんに抱かれたい。
愛液で濡れたローターをこんどは乳首に当てる。
「ふわわぁ!」
痛みにも似た快感が乳房を震わせた。
あえぎながら体をよじる。
足を使ってパンツを足首までずり下ろした。
ふたたびローターをアソコに押し付ける。
クリトリスへの刺激で愛液が泉のようにあふれる。
敏感な乳首を指先でくりくりといじりまわす。
拓ちゃん! 拓ちゃん! もっと! もっと!
そのとき股間の快感が爆発するように急膨張し、頭に血が上るような熱い快感が体を駆け抜けた。全身が緊張し、ビクビクッと腰を震わせた。
「あぅぅぅっ……、ううっ……」
クリトリスでイッたときの快感は短い。下半身がしびれるような快感が急速に薄れていく。あたしは脱力して大きく息を吐きだすと、ベッドに仰向けになった。
その瞬間、カーテンを開けて覗き込んでいる女子生徒と目が合った。
オルガスムスとは別種の強烈な感覚に全身が震えた。
保健室でオナニーしてるところを見られた!
覗き込んでいるのは三ツ沢さんだった。
あたしは大量の唐辛子を食べたように、恥ずかしさで体じゅうが熱くなるのを感じた。
「あ……、あの……、美星……?」
三ツ沢さんは呆然としたまま、うまくしゃべれない様子だ。
それはあたしも同じだった。どうしていいかわからず、とにかくどこかに隠れたくて、掛け布団を頭からひっかぶってベッドの上でうずくまった。
三ツ沢さんが立ち去る気配はない。それどころか、ベッドのすみに腰掛けてきた。
どうしよう。変態だと思われたに違いない。泣きそうだ。
「美星……」
布団を剥がされまいとして、両手でぎゅうっと引っ張った。
三ツ沢さんは動かない。早くどこかに行ってほしいのに。
「美星、ちょっと意外だったな。あんたがそういう子だったなんて」
明るい声で三ツ沢さんが言った。からかうような口調じゃあない。それでちょっと手を緩めて、布団の外の様子をうかがった。三ツ沢さんは黙ってあたしが反応するのを待ってる。それであたしとしても何か言わないわけにはいかなくなった。
[援交ダイアリー]
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