『栄寿さん、あなたのせいじゃないわ。悪いのはぜんぶあたし。週末にはそっちに行くから、そのときにちゃんと話しましょう』
「は……はい……」
わたしはお父さんからケータイを返してもらった。動いてほしいと目でお父さんに合図する。お父さんは青ざめた表情のまま、催眠術にかかったみたいにピストン運動を始めた。熾火のように続いていた快感が一気に高まった。敏感になっていたアソコから大波がいくつも繰り出す。その波に揉まれながら、ケータイを耳に当てると、
「ママ……、ママ……、栄寿さんのことは、はうッ、心配しなくていいから。あんッ、ママ、……ッ、ママ、わたし、いま、お父さんと……、あんッ、ああっ、お父さんとセックスしてるッ。すごく、はあッ、はあッ、すごく、気持ちいい!」
電話を切った。お父さんに抱かれている様子をママに聞かせるなんて、ちょっと子供っぽかったかも。だって、自慢したかったんだもん。
ケータイを放り出してお父さんに抱きついた。
お父さんの激しいピストンがわたしの奥を突く。さっきまでの優しいセックスとはぜんぜん違う乱暴な動きだ。
「痛い……、お父さん、痛いよ」
小声で訴えたけど、お父さんは構わずに続ける。
セックスしてる最中に、いま挿入している相手が自分の娘だと知らされたお父さんの気持ちは、想像もできない。姪とのセックスにも後ろめたい気持ちはあっただろうけど、従姉妹と大して違わないとも思えば、その気になれたんだろう。それが突然に親子という関係にまでハードルが引き上げられたんだ。混乱してしまうのも当然だよ。
わたしはお父さんを抱く腕に力を入れた。
ちょっとくらい痛いのはがまんしよう。
大丈夫だよ、お父さん。受け止めてあげる。
愛してるって、そういうことだもん。
お父さんのこと、愛してるから。
「ああッ、あッ、あッ、ああんッ」
奥に当たってる。
快感の渦が全身の細胞を飲み込んでいく。
気持ちよさを通り越して苦痛さえ感じる。
息ができない。
「那由多さん……」
搾り出すようにお父さんがママの名前をつぶやいた。泣いてるんだ。涙を流してるわけじゃないし、泣き声をあげてるわけでもない。でも、心が悲鳴を上げているのがわかる。もしかして……。
突然、胸の奥にズキンという痛みを感じた。セックスの痛みじゃない。
こういうのを女の勘と言うんだろう。十五年目の真実に気づいてしまったんだ。お父さんの気持ちがわかってしまった。
お父さんがわたしの中に射精した。熱い精液が子宮口にほとばしった。わたしの体がお父さんを受け止めた。
「那由多さん……。くっ、那由多さん……」
二回も中に出したのに、お父さんがまた腰を振り始めた。
アソコから精液が漏れ出し、ピストン運動のたびにくちゅくちゅと音を立てた。
お父さんを抱きしめる。
「お父さん……。わたしはお父さんのおかげで生まれたんだよ。お父さんがママのことを好きになったから、わたしは生まれてきたんだよ。わたしのこと、好きって言ってくれたじゃない。だから、自分を責めないで」
わたしの声は届いただろうか。
ずっとわたしのことが好きだったと言ってくれたお父さん。だけど、わかっちゃった。
お父さんが本当に好きなのは、いまでもママなんだ。
つづく
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