第2話 メイドさんの憂鬱 (02)

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ママは家ではランジェリーで過ごす。きょうは長袖、ハイネックの黒のテディに、黒の柄ストッキングだ。美人でスタイルがいいから、すごくかっこいい。

ちなみにわたしはメイド服を部屋着にしている。メイド服って、ゆったりしたワンピースだから、動きやすくて楽ちんだし、かわいいデザインが好きなんだ。

「ねえねえ、ママは初体験のときにも気持よくなれた?」

ママがバージンを捧げた相手は実のお兄さん、つまりわたしの伯父さんだ。そのときママはまだ中学一年生だった。

ママはわたしを両手で抱きしめると、

「すごく痛かったわ。気持ちいいこととかぜんぜんなくてね。でも、すごく幸せだった。兄さんのことが大好きだったもの」

「わたしもお兄ちゃんがいればよかったのにな」

「パパじゃダメなの? ママに遠慮してるのかしら? 莉子がそうしたいのなら、パパとエッチしてもいいのよ」

「そうじゃないの。たぶん、パパとはあまりに親密すぎて、初体験の相手として考えられないんだと思う」

わたしはママの連れ子なので、パパとは血のつながりはない。パパとはいつの日かセックスする約束をしてる。でも、初めての相手じゃないんだ。

ママはわたしのおでこにキスをして、

「莉子はどんな男の子がいいのかな?」

「そうね。まず、かっこよくてハンサムな人じゃなきゃ。それから、優しくしてくれる人。やっぱり年上の人がいいな。それでいて、わたしのことを子供扱いしなくて、わたしのことをわかってくれる人。経験豊富な人にリードしてほしいの。そんな人、どこかにいないかな。もしかして、わたしって、夢を見過ぎてるのかな。注文が多いってのはわかってるんだけど」

言いながら、これってどう考えてもパパのことだよね、と思った。

ママが優しく笑いながら、わたしを抱く腕にぎゅっと力を入れた。ゆりかごのように体を揺らす。ママって、いい匂いがするな。

「いい人に出会えるといいね。莉子が幸せな初体験ができるよう、ママも祈ってるわ」

「うん。あ、それでお使いに行ってほしいって言ってたけど?」

ママはわたしから離れて、

「ぼたもちを作ったから、栄寿(えいじゅ)さんのところに持って行ってほしいの。頼めるかしら」

「いいよ」

わたしは二つ返事で受けた。

栄寿さんの名前が出たとたん、わたしは思ったのだ。

(初体験の相手の新たな候補が見つかった!)

夏目(なつめ)栄寿さんは、わたしの生物学上の父親である夏目おじさん――こういう言い方をするのは、わたしの父親はパパだけだと思っているからなんだけど――の弟で、つまりわたしの叔父さんだ。

初めて会ったときはまだ大学生だった。いまは大学の講師をしていて、二十七歳か二十八歳だったと思う。ハンサムというよりカワイイという感じで、とても優しい人だ。以前は栄寿さんは同じ区内に住んでいたので、小学生のころはよく遊びに連れていってもらった。

ただ、ひとつ問題がある。

栄寿さんはとても女性にモテる。栄寿さんはプレイボーイなのだ。

高校生になったばかりの女の子なんて相手にされないかもしれない。

でも、当たってみる価値はある。

よーし、決めた。

思いっきりオトナっぽい服を着て、おめかしして、栄寿さんを誘惑してやるのだ。

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