どこまでも興奮が高まっていく。
ときおり、体がビクンッ、ビクンッ、と震えた。
それなのに絶頂にまでは達しないんだ。
ふわふわして、いまにも体が浮き上がりそう。だけど、飛び上がりそうで飛び上がらない。ずっと助走が続いているような感じ。
その間、快感がどんどん体の中に溜まっていく。
ふっと全身の力が抜けそうになったかと思うと、またぐっと筋肉が緊張する。
そんなことがいつまでも続く。
「莉子ぉ……。ああっ、もっと……、もっと……」
頭が朦朧となる。
このままバイブレーターの電池が切れるまで快感に苛まれ続けるのかな……。
おかしくなっちゃうよ。
「莉子……、莉子……」
「莉子ちゃん……」
声がした。ラブドールの莉子が空想の中でわたしを呼んだのかと思ったけど、違った。
うつろな視線を声がしたほうに向ける。ドアのところにあずきさんが立っていた。
ああ、買い物から帰ってきたんだな、とぼんやりと思った。そして、我に返った。
「あ、あずきさん……!」
見つかっちゃった。あわててラブドールから離れようとしたけど、力が入らない。バイブレーターはまだブインブインと音を立てながら、体内で動き回っている。
怒られちゃうかも、それともからかわれるのかも。何を言われるかと思ったら、あずきさんは駆け寄ってきて、わたしを抱きしめた。
「莉子ちゃん、女同士のセックスに目覚めたんだね」
え……?
「いや、そんなわけじゃ……」
そう言いかけたとき、溜まりに溜まっていた快感が爆発した。
全身の力が抜けたかと思うと、体が浮き上がった。体重が消えたような感じ。それから落ちていくような感じ。
心ではそう感じてるんだけど、実際には体は硬直していて、あずきさんの腕に抱かれながら全身を突っ張っていた。
あずきさんにしがみついて、あずきさんの胸に顔をうずめた。バイブレーターの音が止まない。泣きそうになりながら、苦痛にも似た快感に耐えた。
下半身がガクガク震えた。バイブレーターがズルッとアソコから抜け落ちた。シーツの上に落ちて、まだ音を立ててスイングと回転を続けている。
体がぽかぽかする。汗が噴き出した。
なんだかすごくリラックスした気分。あずきさんはやっぱりママと同じ匂いがする。
呼吸が落ち着いてくるのを待って、あずきさんの優しい笑顔を見上げた。
「あずきさん……、キス……したい……」
うわごとのようにつぶやいて目を閉じた。
あずきさんはそっとキスしてくれた。おやすみを言うママのような優しいキス。ママ以外の女の人とキスするのは初めてだ。
心地よい疲労感に包まれて、穏やかな気持ちが広がっていく。
わたしはオルガスムスの余韻に浸りながら、あずきさんの腕の中で眠りに落ちた。
つづく
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