第9話 すべての呪いが生まれた日 (16)Fin

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「あたしが自殺してしまう前に、たっぷりヤラせてもらおうと思った?」

「ボロボロになって放置されている古いクルマを、誰もが乗りたくなるような名車として蘇らせ、高値で転売する。そういうロマンも男にはある」

そういう内容のアメリカのテレビ番組があるのは知ってる。じゃあ、あたしはレストアされた上にカスタムされたラブドールってこと?

「あのときは電車の中で服を脱がされて、すごく怖かったんだからね」

晴嵐に入学したとき、もう男に犯されるのはやめると決めていた。じきに訪れるはずの死の瞬間まで、もうセックスはしないと。だけどショウマに犯された。

五月の終わり頃だった。電車の中でショウマに痴漢された。痴漢されたのは初めてだった。白昼、人目がある場所で襲われるなんて思ってなかったから、怖くて何もできなかった。震えてじっと耐えているしかなかった。それ以上に、けっきょくあたしはこうなっちゃうんだ、というショックで涙がこぼれた。あたしはお尻や胸を触られて感じていたんだ。もうこんな目に遭うのはいやだと思っていたのに、それ以上のことをされることを期待していたんだ。ショウマがしたのは期待を遥かに超えることだった。あたしは電車の中で服を脱がされたんだ。

「まずは確認する必要があった。お前の心と体をな。沙希は俺のにらんだとおりの少女だった。やりがいを感じる女だ」

ショウマの言うやりがいとは、開発しがいのある女の子という意味だ。

あたしはそのとき、サロペットパンツの上にシャツワンピを羽織った服装だった。ショウマはあたしを後ろから抱きすくめ、まずはサロペットを脱がせ、次いでナイフでシャツを切り裂いて脱がせた。ブラとパンツも剥ぎ取られて、最後にはローターを挿れられた。ワンピを着ていたけど、ほかの人にも見られたはずだ。なのに、それでますます興奮してしまった。あたしは電車を降りるよう命じられ、ラブホテルに連れ込まれた。あまりのことに気を失いそうで、抵抗することなんてできなかった。

それまで経験したことのないレイプだった。ショウマのレイプはすごくやさしくて、あたしのことをぜんぶわかってくれているような気がして、ほんとの恋人のように大切に扱ってくれた。ものすごく気持ちよかった。レイプで感じたことは何度もあったけど、そういうのじゃない。心も体もしあわせで満たされたんだ。このとき、あたしは生まれて初めて、奥でイクという経験をした。

終わったあと、あたしは声を上げて泣いた。悲しかったからじゃない。逆だ。もっと気持ちいいセックスをしたい。もっと快感を追求したい。心と体のぜんぶで満たされたい。

――だから、もうすこし生きていたい。

ショウマは次に会う日を約束してくれた。ショウマはあたしを開発し、身を守る方法や男を見定める方法、自分の価値を高く見せる方法なんかを教えてくれた。ショウマはあたしには誰にも負けないほどの価値があると言ってくれた。ベッドの上でならお姫さまになれると言ってくれた。

あれから一年近く。

あたしは援助交際をしてる。いまはそれなりにやっていけている。

別に生きる希望がわいてきたとか、トラウマを克服できたとかじゃない。

あたしはどんどん壊れていっているし、そのうちに電池が切れる。

ただ、その日が来るまでのあいだにやっておきたいことが見つかったってだけだ。

「しょおまぁ、だっこしてぇ」

あたしがおねだりすると、ショウマがベッドの上に座って、あたしを引っ張り上げた。全身をペロペロ愛撫されてメロメロにとろけたあたしは、ショウマに抱きついた。一回目は大好きな対面座位だ。ショウマのアレはお腹にくっつくほど反り上がっていて、赤黒いツヤツヤした亀頭がカウパーでテロテロに濡れている。

「生でしようよ。いっぱい中に出して。大丈夫な日じゃないけど、ピル飲むからさ」

アレをアソコにあてがって、そろそろと腰を落とす。

ショウマがあたしの中に入ってくる。すごく気持ちいい。

ずっと高原状態だったあたしは、奥まで届いたとたんにイッた。脈打つような深い快感が全身に広がっていく。ショウマにギュウッとしがみついた。体がガクガク震える。オーガズムがいつまでもつづく。このまま気を失ってしまうだろう。

日付はとっくに変わっていた。

三月二十七日。

あたしは十六歳になった。

第9話 おわり

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