お兄ちゃんと不倫しました (01)

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 お兄ちゃんと不倫をしてしまいました。

 お兄ちゃんは結婚して七年か八年目になるのかな。小学一年生と保育園に通う息子がいます。女っ気がない人だったけど、二十五歳のときに大学の学科の同窓会に出た際、奥さんの方から積極的にアプローチされたのがきっかけで結婚したそうです。当時、お兄ちゃんは修士課程を修了して大企業に就職したばかり。

「奈々以外の女の子と付き合ったことないから、うまくいくか不安だ」

 などとこぼしてたので、お兄ちゃんみたいな優良物件に文句を言うような女はわたしがとっちめてやるよ、と言ってあげました。付き合ってたのとは違うけど、わたしはお兄ちゃんの初体験の相手なんです。

 あ、いちおうこの話の中ではわたしの名前は奈々ということにしておきます。もちろん仮の名前ですけど、名前がないと書いていくうちに困りそうなので。

 それで不倫関係になったわけですが――。

 実を言うと、わたしも昨年、結婚してます。

 なので、不倫は不倫でもW不倫なわけです。

 で、ですね、これがなかなかよかったので、自慢したい気持ちもあって、顛末を書いておこうと思うのです。

 わたしにお兄ちゃんがいる、ということを知ったのは、中学生のときでした。祖母の、つまり、わたしの生物学上の父親の、母親のお葬式のときです。他人のお葬式なんてめんどくさかったけど、お母さんだって誰が死んだのかなんてどうでもよかったのです。

 お母さんは、あたしの父親に娘を認知するようお願いに行ったのです。

 祖母の家は山あいにある農家でした。お母さんとわたしは家の敷地には入れてもらえなかったので、門の外で一悶着ありました。喪主であるわたしの父親が出てきて、お母さんを林の陰に連れて行って口論を始めると、わたしは竹やぶの前の石垣に腰を下ろして、門のところでもらった葬式饅頭を食べながら話が終わるのを待っていました。

 認知、というのが行われると何が起きるのか、わたしは興味がありませんでした。

 わたしのお父さんは別にいます。お父さんはわたしが小学生の低学年のときに離婚して出て行ってしまいました。出ていくときにお父さんは、泣いてすがるわたしに「お前は俺の子じゃない」と言って突き放しました。

 ものすごくショックだったな。

 そうして、血のつながった父親が別にいるのだということを知ったわけですが、こちらもわたしを見るなり、どうして産んだんだと怒り始め、「お前は俺の子じゃない」と罵りました。こんなことを言われたのは二人目ですが、やっぱりショックでしたよ。

 まだ高校生だったお母さんは、妊娠したことをわたしの父親に告げると、手術代を払うからすぐに堕ろせ、と怒鳴られたそうです。お母さんはいろんな男の人と体の関係にあったというし、父親の方もすでに妻子がありましたから。けっきょく、お母さんはわたしを産むことに決め、高校をやめてすぐ別の男の人、つまり、わたしのお父さんと結婚したんです。わたしのせいでお父さんの人生がメチャメチャになってしまったことに、いまでも後ろめたさを感じてます。

 わたしのお母さんは誇り高い女性です。わたしの父親に頼み事をするなんて我慢がならないことだったはずなのに、お母さんがお葬式にかこつけて昔の男に会いに行ったのは、わたしが壊れかけていたからです。

 中学生のときのわたしは心をちょっとばかし病んでいました。解離とか離人症っていうような症状があったんですよね。

 その前の小学生のわたしは引っ込み思案な性格になっていました。もっと小さい頃は友達も多かったんですよ。お父さんが最後に言ったセリフのショックが、自分で思うよりずっと重い影を残してたんだと思います。お母さんは夜の仕事をしてて、友達も「奈々ちゃんと遊んじゃいけないって言われた」とかで疎遠になってしまって、わたしはひとりでいることが多くなっていきました。

 高学年の頃はひとりでレイプ体験談を読み漁りながらローターオナニーを繰り返す日々でした。もともと物心ついた頃にはオナニーしてたんですけどね。そんな子だったので十一歳になったばかりの頃に初体験をしてしまい、それから小学生なのにいろいろ経験してしまいました。初めて援交したのも六年生のときだしね。レイプとか怖い目にも遭いましたけど、性の冒険は楽しかったです。

 でも、中学生になってから、いろいろあって。いじめとか先生から酷いことされたりとか。一番こたえたのは養護の先生から法定強姦という言葉を教えられ、「あなたは悪くない、被害者なの、悪いのは大人たちよ」と言われて、わたしの全人格を否定されたとき。

 それで学校に行けなくなってしまいました。

 祖母のお葬式があったのは、そんな感じでボロボロになってた頃のことです。

 大人たちの口論を遠目にぼんやり眺めながらお饅頭を食べていると、ひとりの若い男性が近寄ってきて、となりに座りました。わたしにエッチなことをしようとしてるのかな、と思ったのですけど、

「きみは奈々ちゃんっていうんだってね。中学生かい?」

 と、やさしく声をかけられました。

 それがお兄ちゃんでした。

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