第15話 ロンリーガールによろしく (10)

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「新庄、ほんとに鳴海ちゃんじゃないか。こいつ、ここで何やってんの?」

 津谷があたしの顔を覗き込んだ。舌なめずりするような表情でニヤニヤ見下ろしてくる。

「は、離して……、お……、お願い……します……」

 かすれる声で言うと、二人はへらへら笑った。あたしが恐怖にすくみ上がっているのを、こいつらは見透かしてる。

「つれないこと言うなよ。俺たちは何度も体の相性を確かめ合った仲じゃねえか。急に転校しちまうから寂しかったんだぜ? お前だって久しぶりに俺のデカチンが欲しくなって会いに来たんだろ? んんー、相変わらずいい匂いさせてやがる。ますます美人になったし、胸も大きくなって、食べ頃に育ってきたようだな。たっぷり楽しませてやるよ」

「ヤるのか、新庄? ビデオも用意するか?」

「おう。例の場所に連れてくぞ。ネットにアップした動画の続編制作と行こう。清川たちも呼んでこい。パチンコなんかやってる場合じゃねえってな。あと、ウルシーにもヤらせてやろうや。あいつ、まだ童貞だからな」

 津谷は「わかった」と返事をしてパチンコ屋の中に入っていった。

 目の前が真っ暗になった。中学の時と同じ。怖くて抵抗できない。どうして体が動かないのか。どうして声が出ないのか。もうあの頃のあたしじゃないはずなのに。

 ほどなく津谷が三人の男を連れて戻ってきた。清川と南野。もう一人は初めて見る男だ。歳は新庄たちと同じくらいで小太り。幼児のような笑顔を浮かべて、ちいさな歩幅で膝を曲げながら歩いてくる。独り言をつぶやいているけど、何を言っているのかは聞き取れない、というか意味を取れない。

「漆山、よろこべ。お前、この女の子とオマンコできるぞ」

 津谷が漆山と呼ばれた男の首をつかんであたしの顔に近づけた。漆山はそれが喜びの表現なのか、「ウホッ、ウホッ」とゴリラのマネをした。顔つきからしてダウン症だ。知的障害者なんだろう。

「よし、揃ったな。じゃあ行くか。俺たちの性奴隷がどんな女に育ったか、マンコの締まり具合を確かめにな。久しぶりに鳴海をレイプしまくるぞ。そうすりゃ袖崎の供養にもなるってものだ。ビデオに撮って千鶴に見せてやりゃ、あいつもちょっとは元気がでるだろうさ。おい、ウルシー、俺たちが楽しんだあとで、ウルシーにも初レイプをやらしてやるからな。楽しみにしてろ」

 あたしは男たちに囲まれて連行された。すれ違う通行人に視線で助けを求めたけど、みんな目をそらす。そうだ。助けてくれる人なんているわけないんだ。あたしの心は中学の頃に引き戻されていった。

 雨が降り始めていた。

 新庄は近くに停めてあったワンボックスのバンのスライドドアを開け、あたしをつかまえたまま乗り込んだ。あとから南野と漆山が乗り込んできて、新庄とサンドイッチされる形になった。ぎゅうぎゅう詰めで、なかば新庄に抱きかかえられる形だ。荷台には脚立や電動工具、ハンマーや防塵マスクなどが無造作に置かれていた。解体工の仕事でもしているらしい。それらの荷物が載っているのでなかったら、ここで取り敢えず一回戦となっていたかもしれない。

 津山が運転し、清川が助手席に乗った。男たちは口々に卑猥な言葉を投げかけてくる。あたしは震えて縮こまっているしかなかった。どうしようもない。何もできない。強姦を受け入れるしかない。中学のときのように、何もかもあきらめて、絶望に落ちて、心を閉ざしているしかないんだ。

 新庄が頬ずりしながら胸を揉んできた。逃れようと体をもぞもぞさせるけど身動きできない。せめて顔をそむけようとすると新庄の方を向かされた。

「いい女になったなぁ。いま高校生か? あ? おっぱいも大きくなりやがって。Cカップか? それともDか? どうなんだ? 答えろよ」

 あたしは嗚咽を噛み殺して唸った。

「こ……、高二……。し……、かっ……、ぷ……」

「Cカップかぁ。俺が揉んだらもっと大きくなるぞ。感謝しろよ」

 そう言って新庄が無理やりキスをしてきた。嫌がると新庄に口を開けさせられ、舌を吸われた。唾液を流し込まれて飲まされた。

「やっぱり鳴海とのキスは最高だな。お前は俺の初めての女だからな。いくつになっても忘れられねえや。お前らもそうだろ?」

 津山と南野が下卑た笑いで同意した。童貞ではなかった清川だけは、かすかに馬鹿にしたように唇を歪めただけだった。

 漆山があたしの胸に手を伸ばしてきた。新庄がその手をはたいて、「お前はまだだ。我慢しろ」と命じた。漆山が不満そうにブツブツ言って手を引っ込めた。

 車は市街地を離れて、川沿いに山の方へと向かった。雨が激しくなってきて、津山がワイパーのスピードを上げた。この数日に降った雨で、川は水位を増していた。山の中に入るにつれて川幅が狭まり、流れも速く激しくなっていった。民家はなくなり、すれ違う車もなくなった。道路の舗装もなくなり、車がガタガタと揺れだした。こうして三十分ほど走って着いたのは、川沿いに立つちいさな平屋の建物だった。

 新庄が「例の場所」と呼んだ強姦部屋だ。

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