第8話 バイブであそぼっ (03)
あずきさんにバイブレーターを渡された。透明な部分に触れてみると、グミのような感触だ。結構リアル。本物と違って、体温はないな。
ボタンを押してみた。
「うわわっ」
びっくりした。バイブレーターがクネクネとうごめきだした。それと同時に、銀色のボールのリングが回転しはじめたのだ。
ひゃー、なにこれッ。
さらに別のボタンを押す。
「うわー、逆回転になった」
これはあれですか、挿入してから右回転、左回転と切り替えながら楽しむわけですか。
別のボタンを押すと、こんどはウサギがブーンと振動をはじめた。ウサギの耳がプルプルプルと震えている。ああ、そうか、このウサギがクリトリスに当たるんだ。
もう一個、別のボタンを押してみる。
すると、ウサギの振動パターンが変化した。ブーンと唸っていたウサギが、不連続な振動に切り替わったんだ。ちょうど、脈打ってるような感じだ。
もう一度ボタンを押してみた。今度は波打つようなパターンに変わった。振動が連続的に強くなったり弱くなったりを繰り返す。
ボタンを押すたびに振動のパターンが変わるらしい。何度もボタンを押していると、やがて元のパターンに戻った。どうやら振動の強さや回転の強さも調節できるみたい。
「ひゃー、おもしろーい!」
たまらず笑い出してしまった。
オナニーに使うバイブレーターがこれほどの仕掛けを凝らした器具だったとは。
すごいな、これ。
「使ってみたい?」
うん、使ってみたい!
「…………、え?」
固まった。あずきさんが期待を込めた目で見ている。
「試してみたら? 莉子ちゃんの感想も聞いてみたいなぁ。使うときはコンドームを被せて、このローションを塗るんだ。ローションの感触がまた気持ちいいんだよ」
「いや、そんな……」
使ってみたいけど……、やっぱり恥ずかしい。
わたしは答えられなくなって、うつむいてしまった。あずきさんは大笑いしながらわたしを抱きしめて、
「ほんと、かわいいなァ、莉子ちゃんは」
むう、からかわれてたのかも。
でも、バイブレーターっておもしろそう。通販で買ってみようかな。
スイッチを切ってバイブレーターをあずきさんに返した。
「それで、リビングのお掃除が終わったんですけど、ほかに何かお手伝いすることはないですか?」
「お手伝いというわけじゃないけど、莉子ちゃんのお仕事はあるよ」
あずきさんは、ちょっと待っててと言い残して部屋を出て行った。しばらくして戻ってくると、手にした紙袋から数学の問題集を取り出した。
「ここに滞在しているあいだ莉子ちゃんのお勉強を見てあげて欲しいって、お母さんに頼まれてるんだよね」
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