人妻セーラー服2 (04)
陽蘭高校は駅から歩いて十五分ほど。すでに授業は終わっている時間なので、駅前にも帰宅部の生徒たちが散見された。
くるみは懐かしいという思いを心の隅に追いやって、自分が今まさに高校生なのだと思い込もうとした。自分さえも騙せるようでなければ、男子高校生はともかく女子高生の目は騙せない。
女子高生に扮した自分の姿を七年分の人生経験を得た目で見てみると、高校生の頃にやり残したことがたくさんあるように思えた。たとえば、もっと勉強をしっかりやっておけばよかったと思える。これは意外なんだけど、特に数学なんて嫌がらずに勉強しとけばよかった、と思えるんだ。
その一方で、自分は真面目すぎた、とも思う。もっと冒険して、もっといろいろなことを経験しておけばよかった。主婦となった今の生活は幸せだけど、高校生のときでなければできないことだっていっぱいあったはず。
恋愛やセックスだって……。
さっき喫茶店で見た少年の態度を思い出して、くるみは微笑んだ。
(あの子、あたしがそれとなくパンツを見せてあげたら、顔を真っ赤にしちゃってた。純情な童貞くんは初々しいなぁ。くすくす)
政宗くんはまったく気づいていなかったけど、くるみはわざとパンツを見せてたんだよね。高校生くらいだと、電車の中とかで向かいの席のおじさんにスカートの中を見せてからかったりすることがあるじゃない。真面目なくるみは在学中はそうしたことはやらなかったんだけど、二十五歳にもなって目覚めるとはね。
まあ、そんなくるみも、政宗くんが一週間前からストーカーになってたことまでは知らない。都会の雑踏でたまたま出会うなんてことはそうそうないから、あの少年ともこれっきりだろうと思っていた。
家に帰るために駅の改札をくぐったくるみ。
今夜のおかずは何にしようかしら、なんて考えてる。
帰宅ラッシュにはまだ早いけど、ホームには電車を待つたくさんの人がいた。陽蘭高校の生徒も多い。翌日には『きのう駅のホームですごくカワイイ一年生を見たんだけど何組の誰だ』などと校内の噂になってしまうのだった。でも、それはくるみが永遠に知ることのない話。
しばらくして電車が来た。階段近くを避けたのに車両は混んでいた。疲れた表情の会社員、大学生のカップル、女子高生のグループ、子連れの主婦、暇そうな老人、仕事の休みが平日の人、仕事が見つからずに沈んでる人。
空いてる座席も、つかまれる吊り革もなかったので、くるみはドアの横に立った。
ドアが閉まって列車が動き出してすぐのこと――。
お尻に何かが触れた。
思わず全身が固くなった。
(痴漢……!)
ミニスカートの上からお尻を撫でられていた。
すこしだけ首を回して背後をうかがうと、スーツ姿の中年男性がすぐ後ろに立っていた。その人がくるみに覆いかぶさらんばかりに体を近づけ、お尻に触ってきている。
迂闊だった。
ドア横の隅なので逃げ場がない。
高校生のときは朝の通学電車で頻繁に痴漢に遭ったものだ。制服を着ていると痴漢に遭いやすい。多くの友達もよく痴漢されると言っていた。相手の手をつかんで「この人チカンです!」とやった友人もいたけど、くるみはそこまでの勇気は持てなかった。だから、たいていは痴漢されても黙って耐えていた。
久しぶりに痴漢に遭ったくるみは、怖いと思いつつも、うつむいてじっとしていた。
ただ、女子高生だと勘違いされて触られてるんだと思うと、ちょっとワクワク。
痴漢は性暴力。でも、たいていはお尻を触られるだけ。すこしのあいだガマンしていれば済む。何もレイプされるわけじゃない――。
ここが痴漢の落とし穴。じっとガマンしてるうちに行為がエスカレートしていくんだもの。認知バイアスのせいで、女はまだ耐えられると思ってしまうし、男はまだイケると思ってしまう。
常習者による集団痴漢だってあるし、ローターを使われることだってある。まわりの乗客なんて見て見ぬ振り。挿入までされないのは単に駅に停車するという形で時間が限られているから。でも、列車を降りるよう命じられて、外で時間をかけて強姦されることもあるから、痴漢は触られるだけだと舐めないほうがいい。
しかし、くるみである。
この痴漢がどこまでするのか興味が湧いてきていた。期待していると言ってもいい。
耳に息を吹きかけられた。思わずビクッとして肩をすくめる。
くるみが抵抗しないのを見て取ると、痴漢はスカートの中に手を入れてきた。パンツごしにお尻に触ってくる。
ドキドキして濡れてくるのを感じた。
その時だ――。
[人妻セーラー服2]
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