窓から吹き込む風を浴びて、いまさらながらに自分が下着のままだということを思い出した。子供用のソフトブラにかぼちゃパンツ、しましまニーソにヘッドドレスという姿だった。
すごく子供っぽい。それが嫌で、わたしはベッドのシーツを取って、体に羽織ると、床にへたりこんだ。
自分でもどうしていいかわからなかった。
栄寿さんに対して、ふたりのメイドさんに対して、ママに対して、どんな感情を抱いたらいいのか。
わたしはまだただの子供なのだと思い知らされた気がした。早くセックスしたいと思ってる自分はませた女の子だと思っていた。でも、世の中にはわたしにはわからないことがいっぱいあったのだ。これが大人の世界というものなんだろうか。
栄寿さんとメイドさんたちが部屋に入ってきた。
「莉子ちゃん……」
栄寿さんが弱々しく声をかけた。
「ショックだったかな。ぼくのことを軽蔑しているよね」
そんなことはなかった。もちろんショックだったのは確かだ。だけど、もなかさんとあずきさんが栄寿さんを慕っているのはわかる。これまで栄寿さんはいつも優しくしてくれた。いまだって、わたしが知っているとおりの人なのに違いないんだ。
栄寿さんは、もう誰ともセックスしないつもりなのかな。なんだか可哀そうだ。ママのせいなの? ママに捨てられたせいで、大人の女性がダメになってしまったの?
もなかさんとあずきさんが夏目家にどんな恩があるのかは知らない。でも、結局はお金でセックスを強要されていることに変りないんじゃないの? それも、初体験を。
練習台が必要だというなら、わたしがなってあげる。
わたしは初体験を栄寿さんとしたい。そう思ってここに来たんだ。
そして、栄寿さんは少女が好きなんだ。
これって好都合じゃないの。
でも……。
だったら、どうしていままで栄寿さんはわたしを誘惑しなかったんだろう。小学生のときも中学生のときも、ふたりきりで出かけたことが何度もあるのに。
姪だから? お兄さんの娘だから?
わたしはメイドさんたちを振り返って、
「もなかさん、あずきさん、しばらく栄寿さんとふたりきりにしてくれませんか」
あずきさんは、いやそんなわけにはいかないよ、という顔をした。でも、もなかさんが袖を引っ張って小さく左右に首を振ると、ふたりともおじぎをして部屋を出て行った。
何から話したものかと考えていると、栄寿さんがそばに腰を降ろした。
「ぼくのことを嫌いになっても当然だと思う。まったく、なんと言っていいか……」
「どうして……」
わたしは口ごもった。
栄寿さんを助けてあげたい。もなかさんとあずきさんのこともだ。わたしなら助けられる。いや、きっと世界中でわたしだけが栄寿さんを助けられるんだ。
これは運命だと思う。
だから、思い切って踏み出そう。
栄寿さんを誘惑するんだ。
「どうして、いままでわたしを誘惑しなかったんですか? いくらだってチャンスがあったじゃないですか。小中学生の女の子が好きなんですよね。それとも、わたしって魅力なかったですか?」
栄寿さんは予想外のことを言われたからか、戸惑ったようだ。
「だって、莉子ちゃんは兄さんの娘だし……」
「ママとセックスしてたのって、わたしが生まれる一年くらい前のことですよね」
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