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お兄ちゃんの右手があたしの乳房を包み込む。
そのままゆっくりと円を描くように手を動かされ、あたしは湧きあがってくる快感に思わず声をもらしそうになる。けれど、あたしの唇はお兄ちゃんの唇でふさがれていて、声を飲み込むしかない。そうすると出口をなくした快感が身体の中を駆けまわって、あたしは全身を震わせる。
お兄ちゃんはあたしの乳房を揉みまわしながら、二本の指ではさんだ乳首を刺激してくる。そのたびに電気が走って、息ができなくなる。
(お兄ちゃん……、もっと、もっとして)
あたしは自分のいやらしさに怖れをいだきながらも、お兄ちゃんのお腹に身体を押しつける。お兄ちゃんが唇を離して、少し身体を起こす。あたしは薄目をあけて、お兄ちゃんの優しいまなざしに陶然となる。
お兄ちゃんはあたしの乳首にキスすると、勃起したそれを口に含んで舌先で転がす。ざらざらした舌の感触に、あたしの乳首は痛いくらいに硬くなっていく。お兄ちゃんは指の動きに合わせて、乳首を歯でコリコリと刺激する。
「はうぅ!」
たまらず声をもらしてしまう。いけない。あまり大きな声をあげるとお母さんたちに聞こえちゃう。
あたしは唇を噛んで、快感に耐える。
お兄ちゃんの左手があたしのお腹を下の方へと撫でていく。その手がやわらかな草むらの手前で一度止まり、やがてゆっくりと掻き分けるようにして降りていく。
期待が高まっていく。あたしのアソコはもうびしょびしょだ。それなのにお兄ちゃんの指先が触れたとたん、あとからあとから溢れてくる。
いやらしい子。
あたしはこんなにもいやらしい子なんだ。
愛液まみれの指先で、お兄ちゃんがあたしのクリトリスを剥き出しにする。すべすべした肉芽をぬるぬるした指先で押さえつけ、指の腹でこすると、腰からお尻のあたりまでが快感に包まれる。
指先に力を入れるとにゅるんと逃げてしまうその真珠を、巧みに追い詰めて愛撫をくりかえす。快感が膝を駆け下りて、あたしは両脚を突っ張る。
「あうう、あう、ああっ!」
我慢できずに声をあげてしまう。
もういいや。思い切り大声をあげてしまおう。誰かに聞かれたってかまうものか。
だって、こんなに気持ちいいんだもの。
そう思ったとたん、ドアをノックする音がして、あたしは我に返った。
ハアハアと荒い息をしながら、意識が現実に引き戻されていくのを待つ。
穏やかな土曜日の午後。窓から差し込む初春の日差しがカーペットの上に陽だまりを作っていた。
あたしはイスに座ったまま、両脚を机の上にのせていた。背中を丸めて寝そべるような姿勢で頭を背もたれにあずけている。なんとも行儀の悪いことだ。家族の誰かに見られたら怒られてしまうだろう。あたしはこれでもまじめな優等生だったからだ。
それより、左足首のところにくしゅくしゅに丸まったパンツが引っかかっているのを見られたら、どう思われるだろうか。
「おーい、麻衣。開けるぞ」
あたしはイスから飛び起きた。お兄ちゃんだ。午後は出かけると言っていたのに、いつの間にか帰ってたんだ。
背後でガチャッと音がして、お兄ちゃんがドアを開けた。あたしは胸をはだけたままのブラウスをとっさにカーディガンで隠し、足首に引っかかっているパンツを蹴りとばすと、立ち上がって振り向いた。
お兄ちゃんはドアから半身を覗かせて、手に持った白い箱を見せていた。
「穂波でシュークリームを買ってきたぞ。下でおやつにしないか、って、お前どうかしたのか?」
あたしは顔が引きつっていたのかも知れない。オナニーしてるところをあやうく見られちゃうところだったのだ。
「な、なんでもないよ。すぐ行くから一緒に食べよ!」
「お、おう」
まだ納得いかないという様子で、お兄ちゃんの視線が部屋の中を探るように泳いだ。あたしを気遣っているのだろうし、悪気はないのはわかるが、いまそれは困る。
あたしはお兄ちゃんの前まで行って視界を遮った。上にずらしたままのブラジャーが胸を圧迫する。息がかかるほどお兄ちゃんに近づくと、太ももを愛液が滴るのを感じた。顔が熱い。
「さあさあ、すぐお茶を入れるから」
うわずった声でそう言うと、あたしはお兄ちゃんを部屋から追い出してドアを閉めた。お兄ちゃんが階下に降りていったのを確認すると、ほっと息をついた。
股間に目をやると、太ももの内側が濡れているのがミニスカートの裾から丸見えだった。部屋の中には無造作に脱いだ黒のタイツと白い綿のパンツ。あたしはティッシュで股のあいだを拭き、一度ブラウスを脱いでブラジャーをつけなおすと、パンツとタイツを穿いて、イスに座り込んだ。
途中でやめたせいで身体の中が火照ったままだ。
机の上に一冊のノートがページを開いたままになっていた。そこには大きな文字で、
「お兄ちゃんに抱かれたい!」
と書かれていた。黒のサインペンを使ってレタリングされたその文字のまわりはカラフルなカラーで縁取られ、その下には、あたしがお兄ちゃんに抱かれる様子を描写した文章が書かれている。
あたしはノートを閉じた。
ため息。
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