正常位で抱き合ったまま、もう一時間近くになる。レオくんはあたしに挿入したまま動かない。
不思議なセックスだった。
シュークリームプレイやアナルセックスのときとは打って変わって、静かで落ち着いたセックス。それなのに、気持ちがどんどん高まっていくんだ。
あたしたちはただ見つめ合い、キスをして、好きだとささやき合う。
それだけ。
胸を揉まれることもない。ピストン運動もない。
なのに、どうしてこんなに気持ちいいんだろう。
どうしてこんなに幸せな気持ちに包まれてるんだろう。
レオくんはセックスフレンド。愛してるのは則夫さんだけ。そう宣言したはずなのに、こうしてじっとしてるだけで、レオくんを好きだと思う気持ちがどんどん強くなる。
どうしちゃったんだろう。
なんだか怖い。
さっきレオくんから告白されたときはびっくりした。レオくんの気持ちはすごくうれしかった。
あたしはレオくんが好き。でも則夫さんを裏切ることはできない。レオくんはあたしのことが好き。あたしの愛人以上の存在になりたいと思ってる。でも、いまはセックスフレンドでがまんする。
そんなふうにお互いの立場を確認したことで、あたしたちは気持ちが楽になったんだと思う。このさきどうなるとしても、焦ることはない。いまは互いの体を求めあい、快楽に浸っていればいい。そう思ったから。
だけど、どうしてレオくんへの気持ちがこんなに募ってしまうのか。
レオくんのアレをあたしの中に感じる。その点を除けば、ただリラックスして抱き合ってるだけなのに。
ひとつになってる。
とけあってる。
心まで一体になってる。
こんなセックスもあったんだ。このまま続けたら、きっとあたしの心はレオくんでいっぱいになっちゃう。それが怖い。
そのとき、ケータイの着信音が鳴った。一瞬、いまの自分の状況がつかめず、夢を見ているのだと思ってしまった。
最高のセックス。いつまでも浸っていたい。だけど、邪魔されたことにほっとする気持ちもあった。
「ご主人からじゃないですか?」
レオくんがベッド脇の小さなテーブルからあたしのケータイを取って差し出した。あたしは気だるい気持ちで受け取ると、表示画面を見た。
「うん、則夫さんからだ」
則夫さんは帰る前にいつも電話をくれる。空はまだ明るさを残していたけれど、もう七時近い時刻だった。
あたしはレオくんを見た。レオくんは微笑むばかりで、あたしから出ていこうとはしない。あたしは、ふうっと息を吐き出すと、気持ちを切り替えた。
通話ボタンを押す。
「もしもし、あたし」
いつもの調子を装って話しかけた。それと同時に、レオくんがあたしの胸を愛撫しながら小さくピストン運動を始めた。
ちょっと、いまそんなことしないでよ。
「もしもし、俺」
則夫さんの声が答えた。よく響く低い声。愛するひとの優しい声だ。あたしはこのひとを裏切っている。そう思うと涙が出そうだった。このひとには気づかれちゃいけない。
[新婚不倫]
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