第1話 あこがれのロストバージン (05)
「なんだかきょうの莉子は色っぽいな」
とパパが言った。
(やった!)
その瞬間、撮影の様子をずっと見ていたママが、面白そうに顔をほころばせた。わたしは顔が熱くなるのを感じた。
(うわーっ、ママにはお見通しか)
わたしは立ち上がって、照れたふりをしながら、
「次はヌードをお願いね」
ゆっくりと制服を脱ぎ始めた。
パパを誘惑するような仕草で、セーラーボレロを脱ぐ。その様子をリズミカルなシャッター音とともに、パパが写真に収めていく。
小学生のころからパパにヌードを撮ってもらうのが好きだった。毎年、四季を通じて何度も撮影するんだけど、誕生日には必ず撮ってもらう。パパができたことがうれしかったから、わたしの成長をパパに見てほしかったんだ。きっかけはパパがママのヌードを撮っているのを見たことだった。パパはすごくきれいにわたしのことを撮ってくれる。決してエッチな写真ではない。
でも、いまはちょっとエッチな目で見てほしい。
「すごくセクシーだ。大人のモデルさんにも負けてないな」
パパがちょっとからかうような口調で言った。パパを誘惑してやろうというわたしの意図を見透かされたみたい。
てことは、いまのわたしはあまり色っぽく見えないのかも。
わたしはワンピースのファスナーをおろすと、しなを作りながら片足ずつ足を上げて脱いだ。パパがその一部始終をカメラに収める。
身につけているものは、下着と靴だけ。道路やほかの家からは見えないとはいえ、屋外で裸になるのはいつもスリリングだ。
庭の草木は生命力にあふれた春の匂いを振りまいている。暖かい太陽の光に包まれていると、わたしの体にも活力が満ちてくるのを感じた。きっとわたしの中で性的なエネルギーが高まっているのだと思う。
「女子高生になるのだもの、もう子供じゃないよ。女としてのわたしを見てほしいんだ。ねえ、パパ、わたしに女を感じる?」
パパは返事に窮した様子だ。
どうしよう。お願いしてみようか。セックスを教えてほしい、って。
パパだったら……。
パパとだったら……。
わたしが迷っていると、パパは優しい笑顔に戻って、
「うん、莉子はすごくかわいくて美人になったな。きっととても魅力的な女性になると思うよ」
わたしは口をへの字にした。
「それって、いまはまだ魅力的な女性じゃないってこと?」
「魅力的な少女だってことさ。二十歳になるころにはママのような美人になるだろうな。でも、これから高校生になろうというんだから、女になるのはもうすこし先のことだよ。莉子は早く大人になりたいのかい?」
そのとき、わたしを見つめているママと目があった。優しく微笑んでいる。わたしがパパを誘惑しようとしてることに、ママは気づいてるんだよね? 何を考えてるんだろう。わたしがパパとセックスしたらどう思うかな?
急に、それまで考えもしなかったことが脳裏をよぎった。
(パパとセックスするってことは、ママからパパを奪うことになるんじゃないの? パパはママの恋人なんだから)
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