「この子を買ってください。女を買うのに抵抗はないですよね。未成年も初めてってわけじゃないんだし」
「俺は勃たないとさっき言っただろう。それに、いたいけな少女を不幸のどん底に落とすことになるとわかっていて、買うわけにはいかない。俺はそこまで悪人じゃない」
「じゃあ、勃起したら買ってください。あたしたちは助けを求めてるんです。一条さんならそれができます」
「カネか?」
「お金以上のものです」
そう言うと、あたしは一条さんの前に膝をつき、スウェットパンツをトランクスごと引きずり下ろした。
あたしはコートを脱ぎ捨てて、白ブレザーにチェックのミニスカ、黒ニーハイ姿になった。ノーブラなので、ブラウスごしに乳首の突起がまるわかりだ。
一条さんは抵抗せず、あたしのすることを見守っている。陰毛の中のアレは萎えたままで、発育不良のとうもろこしのように見えた。包皮がちいさく口を開けている。中に隠れてる亀頭が半分ほど顔をのぞかせていた。
先っぽを軽く舌先で舐めてあげてから、一条さんに微笑んだ。
「ベッドに腰掛けてよ。フェラチオはあまりうまくないですけど、がんばるから。言っときますけど、一条さんがこの子を不幸にしたくないと本気で思ってるなら、コレを勃たせちゃダメですからね。もし勃ったらこの子とセックスしてくださいね」
一条さんは言われたとおり、ベッドに座って股を開いた。自分がこれ以上の悪事を重ねるはずがないと思っているんだろう。
あたしは陰毛をかきわけてアレを手に取った。
先端にチュッ、サオをペロッ、袋をサワサワ。
「おちんちんがちょっと反応してきました。勃たせちゃダメですよ。勃起したら援交してもらうんですから。いたいけな少女を不幸にしてしまいますよ」
勃たないのは心因性だから、一条さんの中に勃たせようと焦る気持ちがあるときっとうまくいかない。勃たせちゃいけないと言った方が逆に作用するんじゃないかと思う。
「先週、コンパニオンのバイトの話をしたとき、一条さん、本気であたしのことを心配してくれたじゃないですか。あのとき、すごくうれしかった。この人にあげたいって思いました」
あたしは手と舌でアレをやわらかく愛撫しながら言った。
「あたしは小学生のときに処女を奪われちゃったんですけど。先週会ったときにまだバージンだったら、一条さんにあげたかったです」
「沙希ちゃんも父親から虐待されていたのか?」
「あたし、お父さんに売春させられたこともあるんですよ。知らないオジサンに売られたんです。だから、あのとき、一条さんが怒ってくれたのがうれしかったです」
「ひどい父親だ」
「そうでもないです。あたしはいまでもお父さんのことが好きです。離婚して出て行っちゃったけど、また会いたい」
「わからないな。父親から性的虐待を受けていたのだろう。恨んだり憎んだりするならわかるが。そっちの子も同じなのか?」
「援助交際する子の事情はそれぞれですよ。お金が欲しいだけの子だってもちろんいます。お父さんが憎くて、自分を傷つけるために援交したいという気持ちだってよくわかります。あたしは自分がどういうきっかけで援交を始めたのか、よく覚えていません。家庭の問題だけじゃない。集団強姦にいじめ。生き地獄だったですよ。だから、援助交際で出会った人たちの優しさがうれしかったです」
「援交相手の連中は沙希ちゃんの体が目的だったんだろ。ヤリたいから表面上は優しく振る舞ってるだけ――」
「一条さんもそうだったですか? あたしの体だけが目的でしたか?」
一条さんは答えなかった。そのかわりに、アレがピクピクした。まだ元気になる気配はない。うまく勃起してくれなかったらどうしよう。
「援助交際はいけないことだ、傷つくのは自分ばかり、あとで本当に好きな人ができたときぜったい後悔する、って、みんな言いますよ。そんな言葉は意味がないです。援助交際をしなければ満たされない子だっているんです。これって犯罪ですか? 加害者が少年なら法律は犯人を罰してくれないんです。学校でそんなことが起きるなんてあってはならない、という理由で被害者の方が責められるんです。それがこの社会だというなら、あたしは社会のルールにはしたがわない。世間はあたしには治療が必要だと言います。でも、それはあたしがあたしであることを否定することです。そんなのはイヤだ。あたしがあたしでなくなることがしあわせだというのなら、世間の考えるしあわせなんていらない」
両手でアレを撫でながら言葉をつづけた。
「あたしたちみたいな子には、もう普通のしあわせなんてないです。何をどうやったって手に入らない。だったらしあわせの定義を自分たちで決めるしかないじゃないですか。それが世間から疎まれるものだとしても、自分のものさしで生きていくしかないです」
ダメだ……。勃ってくれない。
[援交ダイアリー]
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