いけない進路相談 (03)

三十過ぎの矢萩は若いイケメン教師というよりは、渋みの出てきたオジサマという雰囲気で、一部の女子生徒には人気があった。操もそうした女子生徒の一人だった。

さんざん悩み抜いた末に思い切って告白したのは一年生の三学期のことだ。当初は矢萩も困惑した様子で、自分に好意をもつ女子高生をどう扱ったらいいか悩んでいるようだった。それで二人の仲は進展しなかったのだけれど、二年に進級すると状況が変わった。矢萩が操のクラスの担任になったのだ。

操は運命を信じるほうだった。

先生があたしの運命の人なんだ、と操は思った。教師が教え子と恋仲になるのはタブーだということは、操にも理解できる。矢萩が自分に対していまひとつ積極的になれないのもしかたない。

だから、あたしががんばらなくちゃいけないんだ。

そう考えた操は、一学期早々から猛攻撃を開始した。手作り弁当を差し入れたり、放課後に待ち伏せして一緒に帰ろうとしたりした。しかし、矢萩は用心深くて、女子生徒と二人きりになるような愚を冒さなかった。

それでも操は効果的な方法を見つけた。数学の個人授業をおねがいしたのだ。もともと数学は好きで成績もよかった。操が難しい質問をすると矢萩は快く応じてくれた。矢萩のガードも甘くなり、勉強をみてもらえるようになった。

はじめのうちは二人きりにはなれず、矢萩は人目のある放課後の喫茶室を選んでいた。操は矢萩の慎重さを自分に対する誠意だと受け取った。それで操も一方的に攻めるのはよして、矢萩の立場や気持ちを尊重するようにした。

いったんそういう流れができてしまうと、矢萩と操の仲は急速に深まっていった……。

「はううぅぅっ」

操が声をあげた。

「操はかわいいな」

矢萩はブラウスの上から操の乳房をわしづかみにして揉みまわしながら、硬くなった乳首を指先で弄んだ。ノーブラなので直接ブラウスの生地が乳首にこすれて気持ちいい。

両手を壁について、お尻をつきだす姿勢で背後から矢萩に貫かれ、自らも腰を振る。全身を満たす快感に気が遠くなりそうだ。

そのとき不意に出入り口の方から話し声が聞こえてきた。我に返った操は身を固くした。矢萩も動きを止めた。あっ、と思うまもなく、図書室の戸が開けられる音がした。

「……!」

こうなる危険は考えていた。だから二人とも服を着たままなのだ。誰かが来たら、矢萩が操から離れれば、それですむ。二人の様子を怪訝に思うことがあっても、まさかセックスしていたのだとは思うまい。

ところが、いざその状況になってみると、操は恐怖で固まったまま頭の中が真っ白になってしまった。矢萩も同じようで、操の中から出て行こうとしない。

誰かが入ってきた。

(見つかっちゃう……!)

そう思った瞬間、操の体中をいままで感じたことのない強烈な快感が駆け抜けた。電流が流れたように体をビクンビクンと震わせる。体が浮き上がるような感じがした。声を出さないように必死でこらえた。オルガスムスの波が何度もおしよせる。意識が薄れていく。涙がこぼれた。

おしっこをがまんしきれなくなって、おもらししてしまったときのような、止めようと思っても自分では止められない、あきらめて受け入れるしかないのに、それがなんだかほっとするような、そんな感じがした。

甘い快感に包まれながら、どうしようどうしようと、心だけが焦った。

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