第1話 あこがれのロストバージン (08)Fin
わたしはちょっと考え込んでしまった。
初めてのセックスは特別なものだと思う。きっと不安と緊張と、狂おしいくらいの欲望に彩られているものなんじゃないのかな。
パパとするセックスは、なんていうんだろ、安心と安全が保証された予行演習のようなものだ。そういうのって、ノーカウントになるんじゃないだろうか。
「うーん、なんか違うような気がする。パパのこと、大好きだけど」
渋々だけど、認めるしかなかった。パパは最初の相手じゃないんだ。
パパとのセックスがイヤになったわけじゃない。
親子でセックスするなんてムリだと思ったわけでもない。
ロストバージンには、もっとロマンスとスリルが欲しいと思ったんだ。
もしパパと血がつながってたら……。
きっと、パパとの禁断のセックスを望んだだろう。そう思うと皮肉だ。わたしはママの連れ子だから、パパと結婚だってできるのに。
パパはそういうわたしの気持ちや悩みもぜんぶわかってくれてるんだろうな。
「ねえ、パパ。いつかわたしがセックスを覚えて、いい女になったら、わたしのこと抱いてくれる? わたしがどんな女になったか、パパに知ってほしいから」
「いいとも、莉子」
パパはわたしを抱きしめてキスをしてくれた。
撮影会はそれでお開きにした。
それからわたしは裸のまま、ベッドの中でパパといろんなお話をした。初めてパパに会ったときのことや、子供のころの思い出。高校に行ったらしてみたいこと。そんなようなことだ。セックスのことについては話題にしなかった。
いつのまにかパパたちのベッドで眠ってしまい、目が覚めたときは夕方だった。起きたときにはパパの姿はなかった。
パパとの初体験もお流れになっちゃったな。
だけど、パパといつかセックスする約束をした。それがなんだかうれしかった。
お布団にくるまってパパのことを考えていると、ママが部屋に入ってきた。ママはベッドに腰掛けて、わたしの頬をなでた。
ママがわたしに顔を近づけると、
「パパとエッチしなかったのね?」
と小声で訊いた。
わたしは軽く照れ笑いしながら、
「やっぱり、わざとパパとふたりきりにしてくれたんだね。ママはわたしがパパとセックスしてもいいの?」
「あたりまえでしょ。あなたのパパなんだから」
「初めての相手はパパ以外の人にすることにしたわ。でも、いつかパパとセックスするの。そのときはママにも見てもらいたいな」
ママはおもしろそうに笑った。
「楽しみにしているわ、莉子。そのときはママともエッチしようか。女どうしっていうのもいいものよ」
「フフッ、考えておくわ、ママ」
わたしは体を起こして、ママにキスをした。
いつか、パパともママともセックスする日がくるんだな、と思った。悠里がもうすこし成長したら悠里ともしたい。なんか、そういうのってステキだな。
よその家がこういうふうじゃない、ってことはちゃんと知っている。わたしの家がこういうふうなのは秘密だ、ってこともちゃんと理解している。
でもね、わたしはいまの状態が好き。パパもママも弟のことも愛してる。家族なんだから、これが当然だと思うんだ。
つづく
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