人妻セーラー服2 (10)

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(やっぱりそうだよな。この修行は中止だ)

 と、政宗くんは内心胸をなでおろした。いざとなると尻込みしてしまうのも童貞くんにはありがちなことだ。

 くるみが小声でホテルの従業員と話している。

 政宗くんには聞こえなかったのだけれど、

「未成年でしょ。学校帰りにラブホテルなんて来ちゃ――、あら、またあなたなの? セーラー服姿で来られたら困りますよ」

「ごめんなさい」

「彼氏、先週とは別の人ね。お客がイケメンばかりだとお仕事も楽しいでしょう?」

「ははは、そうですね」

 などという会話が交わされたのだった。

 そして政宗くんが驚いたことに、中年の女性はにこやかに笑って、くるみにカードキーを手渡した。

 政宗くんは退路を断たれた。もはや逃げることはできない。

 インターハイの行方も龍星高校剣道部の命運も、すべては政宗くんが性欲を押さえきれるかどうかで決まるのだ。

 政宗くんが連れて行かれた部屋は、予想していたより広々としていた。ダークカラーでまとめられた室内はシンプルで落ち着いた雰囲気。ラブホテルというのはもっとピンク色のどぎつい照明で、いかがわしさに満ちた場所だと思っていた。実際はオシャレで大人っぽく、自分のような剣道バカには似合わない。

 くるみがガラス張りのバスルームに入ってお湯はりを始めた。政宗くんは不穏なものを感じた。二時間耐えてみせろと言われたが、具体的に何をするのか聞いていないことを思い出したのだ。

 バスルームから出てきたくるみはすこし緊張しているように見えた。この部屋の中ではセーラー服の美少女も違和感しかない。

 政宗くんは試合のときのように精神が研ぎ澄まされていくのを感じていた。

 さきほどの電車内での行為については心の底から恥じていた。他校の女子に破廉恥な行いをしてしまったからという外面的なことに対してではない。くるみの可憐さに取り乱し、興奮に我を忘れてしまったことに対してだった。

 しかし、いまは心が落ち着いている。

 強敵と対峙したときのように。

 相手の出方も手の内も分からぬ真剣勝負。

 だが、敵は見えているし、勝利条件も明確になっている。

 戦って勝つ。それだけだ。

「くるみさん」

 政宗くんが落ち着いた口調で言った。駅で見せた態度とは打って変わって穏やかな表情。その変化にくるみはたじろいだ。リードしていると思っていた試合の流れが変わったように感じられたからだ。

「くるみさん、さきほどは本当に申し訳ありませんでした。二度とあのようなことはしないと誓います」

 と言いながら政宗くんは深々と頭を下げた。

「そうあってほしいものだわ。そのための強さを身に着ける修行だもの。言っとくけど、レイプしたら本当に警察に行くからね」

「はい。死にものぐるいでがんばります。しかし、くるみさんは自分のような者のために、どうしてここまでしてくれるのですか」

「ヒラコーと違って龍星高校はスポーツ強いし、同じ市内にあって全国制覇できる実力がある部活なら他校の生徒でも応援したいじゃん」

 などと適当な理屈をでっちあげるくるみ。

 でも、政宗くんはすっかり信じ込んでしまって、感動で打ち震えた。

(なんと素晴らしい女性だ。くるみさんの期待に応えなければ)

 政宗くんの中ではもはや色恋の問題ではなく、精神格闘技の世界へと移行していた。

「では、くるみさん。よろしくお願いしますッ」

 礼に始まり、礼に終わる。武道の基本である。気を抜けば相手にケガをさせてしまう危険な競技だからこそ、礼儀が大切。これはセックスにも通ずる。

「きみのことは信じてるけど、耐えられなくなったら使って。そのあと警察に行くから」

 くるみはコンドームの箱からパッケージをひとつ取り出し、ベッド脇のテーブルに置いた。声と手が震えてた。

「それから……、あたしがいつもこうゆうことしてる女だと……、思わないでほしい」

 そりゃまだ二回目だから、いつもこんなことしてる女とは言えないかもしれないけどね。普通の男子なら「あ、こいつ援交してるな」と思われてもしょうがないところだよ。もっとも、政宗くんにはそんな発想はなく、くるみのことは男と付き合ったことなど一度もない清純な乙女だと思い込んでいた。これまた童貞男子にありがちなことだ。

 まずはくるみのターン。

「それじゃあ、いくわよ」

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