いけない進路相談 (19)

そうして気力を取り戻した操だったが、戦闘モードの心で学校についたのは、ホームルームが始まる直前だった。寝不足で朝のしたくに手間取ったせいだ。

矢萩を問い詰めるのは放課後の勉強会のときにしようと思った。今日は矢萩と約束しているので、そのときにじっくり話せばいい。まずは真琴と話をしたかったが、授業の合間にできるような話でもない。そこで昼休みを狙っていたのだけれど、真琴は生徒会の仕事があるからと弁当を持って教室を出ていってしまった。

時間がたつとそのあいだにいろいろなことを考えてしまい、気持ちが萎えてきてしまう。だから早くケリをつけたかったのに、真琴が戻ってきたのは五時限目の開始のチャイムと同時だった。しかたなく、真琴と話すのは放課後になってからにすることにして、操は授業が終わるのをいらいらしながら待った。

ところが真琴はホームルームが終わるやいなや、通学バッグを持って教室を飛び出していってしまった。あわててあとを追った操は、廊下で話し込んでいる真琴と矢萩を見つけた。

むっとして二人のあいだ割ってはいった操は、矢萩に、

「先生、今日の勉強会なんですけど、ちょっと時間を遅らせてもいいですか? 真琴と大事な話があって」

それを聞くと矢萩は困った表情で言った。

「ああ、すまん、相沢。今日の勉強会は中止にしてくれないか。実ははずせない用事ができてしまってな」

「あ……、そ、そうなんですか……」

矢萩は心底すまないと思っているようだったが、目は真剣で、有無を言わせないところがあった。それで操は何も言えなくなってしまった。

「じゃあ、先生」

と、今度は真琴が言った。

「先にいっててください。操の話がすんだらあたしもいきますから」

その言葉に操は真琴のほうに向き直った。真琴は満面の笑顔を浮かべて矢萩を見つめている。ふたたび矢萩のほうに目をやると、矢萩は虚ろな顔に力ない笑みを作った。

「そうか。じゃあ駐車場にいるからな。相沢、申し訳ない。また今度な」

矢萩はそれだけ言うと、二人に背を向けて、足早に離れていった。呆然として矢萩の後ろ姿を見つめていた操だったが、矢萩が廊下のかどを曲がって姿を消すと、険しい表情で真琴をにらみつけた。

「どういうことよ、真琴!」

「え? ああ、これから先生がドライブに連れてってくれるんだ」

と、真琴は照れたように笑いながら言った。

「ドライブ……って、ウソでしょ……」

「ウソじゃないよ。先生もさっき言ってたでしょ。ああ、そういえば今日、勉強会するとか言ってたっけ? あたしのせいで操に迷惑かけちゃったね。ところで、あたしに大事な話があるんだって?」

操は真琴につかみかかった。真琴の胸に顔をうずめるようにして、操は小さな声を震わせて言った。

「あたし、先生と付き合ってるんだ」

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