それまで抵抗していたあたしの身体は、お兄ちゃんを受け入れ、あたしたちは深くつながった。
お兄ちゃんはじっとあたしを抱きしめている。全部、入ったのかな。奥の方で何か当たる感じがする。お兄ちゃんの先端が子宮口まで届いてるんだ、と思った。お兄ちゃんのアレが脈打ってる。あたしのアソコはひりひりして、中はじんじんして、痛いのは変わらないけど、ちょっと楽になっていた。
それであたしはお兄ちゃんに視線を移し、小さくうなずいた。続けて、いいよ。
男の人は気持ちよくなるためにアレを出したり入れたりしなくちゃいけないんだ、っていうのは知ってる。きっと痛いんだろうな、と思って緊張した。だけど、お兄ちゃんにはあたしの身体で気持ちよくなってほしい。
お兄ちゃんのアレがゆっくりとあたしの中から出て行く。
「ひっ」
傷口をこすられる痛みに声がもれた。先端の丸いところを残して外に出たお兄ちゃんが、また中に入ってくる。
「あぐっ」
今度は圧迫されるような痛みだった。
奥まで達すると、お兄ちゃんは腰を引いて、出て行きかけたところで、また戻ってくる。そして、またくりかえす。
「い、痛いぃ」
小声で訴えた。お兄ちゃんは何も言わない。あたしが痛がるのは織り込み済みだというように、ピストン運動を続ける。
もしかして、お兄ちゃんは経験があるのかな。そんな考えがふと頭をよぎった。経験があってもおかしくない。お兄ちゃんは女の子にモテるもん。ああ、でも四年前からあたしのことを好きだったのなら、ほかの子とセックスしたりしないよね。
そんなふうに考え事をしていると、少しは痛みがまぎれるような気がした。
「痛い、お兄ちゃん、痛い」
あたしはうわごとのようにくりかえすだけだった。お兄ちゃんも心配そうな顔だったけど、動くのをやめるつもりはなさそうだ。むしろ、ストロークを短くしてスピードを速めてきた。それで痛みも増してくる。
正直、少しは気持ちいいものだと思ってた。最初は痛いけどだんだん気持ちよくなってくる、って。けど、実際は痛みしか感じない。
前に雑誌で読んだことがある。女の子の身体は好きな男性に開発してもらって、はじめて感じるようになるのだそうだ。あたしは今日が初めてだから、まだ身体ができていないということなのだろう。この先、お兄ちゃんの手でじっくりと女の身体に作り変えていってもらえば……。
それはできないんだった。お兄ちゃんと両想いだったことがうれしすぎて、すっかり頭から抜け落ちていたけど。お兄ちゃんはあと一週間でいなくなってしまうんだった。
うれしいのに、悲しい。
お兄ちゃんの顔を見る。あたしはずいぶんと苦しそうに顔を歪めているのだろう。お兄ちゃんはあたしのことを気遣うように見ている。腰を動かすスピードをさらに速めた。
「お兄ちゃん、痛いよ、お兄ちゃん」
それしか言えない。あたまがぼーっとしてきた。
でも、お兄ちゃんが気持ちよくなっているのが、表情からわかった。もう少しだからな、麻衣、そんなふうに言っている。きっと、あたしがあんまり痛がるから、手早く済ませてあたしを解放しようと思っているのだろう。あたしも、早く終わってほしい、と思い始めていた。お兄ちゃんのこと好きだから、お兄ちゃんにはあたしとのセックスで気持ちいいと思ってほしかった。けど、お兄ちゃんは自分のことよりあたしのことを心配している。それに、実の妹を取り返しがつかないほど傷つけてしまっていることで、自分を責めている。そんなふうに思った。
でも、そんなことないよ、お兄ちゃん。あたしは、思ってたような快感は感じていなくて、お兄ちゃんが動くたびにすごく痛いけど……、あたしはいま、ものすごくしあわせなんだよ。お兄ちゃんとつながって、お兄ちゃんと一つになれて、お兄ちゃんの気持ちまですごくわかる、それがすごくうれしいんだよ。しあわせでいっぱいで、全身がしあわせで満たされているんだよ。
お兄ちゃん。お兄ちゃんのことが大好き。
伝えたいよ。
あたしが、どれほどしあわせな気持ちなのかを。
あたしが、どんなにお兄ちゃんのことを好きなのかを。
だから、お兄ちゃん。
「中に……、出して……。全部、受け止めるから……」
お兄ちゃんは、ぎょっとしたように見えた。避妊のこと、ぜんぜん考えてなかったことに今更ながら気づいたのだろう。
「今日は……、大丈夫だよ」
週明けには生理がくるはず。だから大丈夫なはず。けど実を言うと、あたしはもし妊娠してしまっても、それはそれで構わないと思っていた。
そのくらいしあわせだったんだ。
「お兄ちゃん……、愛してる」
そう言って、あたしは痛みをこらえながらも、精一杯の笑顔を作った。
お兄ちゃんのことが好きで、お兄ちゃんもあたしのことを好きでいてくれて、兄と妹だけど、こうして結ばれることができて……、数時間前まで諦めていたのに、告白できるなんて思ってもいなかったのに……。
がんばってよかった。
お兄ちゃんが不意に動きを止めて、少し身体を震わせた。お腹の中が熱くなった。しあわせだ。これ以上ないくらい、しあわせだ。お兄ちゃんのものになれたんだ。
お兄ちゃんはあたしの中から出て行ったあと、しばらくあたしを抱きしめて、そっと頭を撫でてくれた。
「麻衣。お前のこと、これからずっと守っていきたいんだ。いいか?」
あたしは、くすくす笑った。
「なにそれ。それじゃ、まるでプロポーズだよ」
「プロポーズだよ」
お兄ちゃんが冗談を言ってるわけじゃないってことが理解できるまでには、すこし時間が必要だった。なんといっても、血のつながった兄と妹なのだ。またしても涙が出てきた。まったく、今夜のあたしはいくら泣けば気が済むのか。
泣き笑いしながら、あたしはお兄ちゃんの胸に顔をうずめて、何度もうなずいた。
「キスして。……俊彦」
くぅ、ダメだ。名前を呼ぶのは照れるよ。
恥ずかしさにうつむいてしまうあたしの顔を上げさせると、お兄ちゃんがキスしてきた。あたしもお兄ちゃんをぎゅっと抱きしめて、キスを返した。
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