第14話 童貞のススメ (03)
「よし、脱がせ、脱がせ」
男たちの声がくぐもって聞こえる。
「イヤッ、やめてッ、やめてってば」
あたしの声も水の中で叫んでいるようにはっきりしない。
「おいおい、コイツ、つるつるじゃねえか。お前、剃ってるのか? ああん?」
いつのまにか何も感じなくなっていた。
ボーッと痺れた心で、あたしは自分がレイプされる様子を見下ろしていた。
スカートを剥ぎ取られ、パンツを足元まで下ろされた少女。
ひっくり返されてお尻の穴を舐められ、強引にフェラチオをさせられている。
アソコに指を挿れられて悲鳴をあげる。
男たちはすでに全裸になっている。
一人だけ服を着ている男がビデオカメラで少女のアソコにズームする。
あたしは彼らの頭上にふわふわ浮いている。泣きながらむなしい抵抗をつづける少女をながめていた。お酒で酔っ払っているときみたいに頭がはっきりしない。涙が止まらないのだけれど、それがどうしてなのかわからない。生まれてきてからずっと泣いていたような気がする。
口ひげの男が少女のお尻をつかみ、バックからアレをアソコに押し当てた。
「挿れるぞ? オラ、もっとケツをあげろ。俺のデカチンは処女にはキツイからな。抵抗しても痛いだけだぞ。ほーら、入るぞ入るぞ。ヒッヒッヒッ」
恐怖に顔を引きつらせる少女をいたぶるように男がじらす。
何度も見た光景――。
あきらめるしかない。それはわかっているけれど、受け入れられない。
誰も助けてはくれない。無力な自分にはどうすることもできない。
何度も味わった屈辱。
犯されて、嗤われて、さらし者にされた。
心を閉ざして、自分自身を見捨てて逃げ出した。
あきらめるしかない。
この少女がこれから何をされるのかよく知ってる。
何度もビデオで見返した。
中学一年生の女の子が学校で繰り返し輪姦され妊娠させられた。
悪いのはお前だと教師から罵倒された。
ネットに流されたレイプビデオはもう消せない。
誰も助けてはくれないんだ。
あきらめて、心を閉ざしているしかないんだ。
「いま大人の階段のぼらせてやるからな。いい声で鳴けよ」
そうして少女のアソコが蹂躙されようとした瞬間、部屋のドアが開いた。三人の男性が部屋に足を踏み入れ、即座に固まった。固まったのは強姦魔たちの方も同じだった。突然の闖入者に挿入も忘れて微動だにしない。
「な、なんだ、あんたたちは? いったいここで何をやっている!」
部屋に入ってきた男性の一人が大声をあげた。作業着らしいものを着た中年で、眼前の光景に目をむいている。作業着を着た男性がもう一人、残りの一人はサマーセーター姿の痩せた老人で、どちらも唖然として口を開けていた。
川口がドアに向かって駆け出し、作業着の男性を突き飛ばした。そのまま部屋を出ていく。つづいて三人の強姦魔も自分の服と靴を手に大慌てで部屋を飛び出していった。
あたしはマットレスの上にうずくまってすすり泣いていた。男たちにつかまれていた手首が痛い。体の感覚が戻っていた。全身がずっしりと重くてうまく動けない。それでも新たな危機に対処しなくてはいけなくなったことは理解していた。
「おい、あんた、大丈夫か?」
作業着の男性が駆け寄ってきて声をかけた。あたしにかける上着がないので、かわりに脱がされたスカートを取ってあたしの下半身にかけてくれた。
「とにかく警察を――」
「ダメッ!」
悲鳴のような声でさえぎった。動かない体に鞭打ってブラジャーを戻し、起き上がろうとした。とにかく警察を呼ばれるわけにはいかない。
「何もされてない。未遂だったから……。警察にも誰にも言わないで。うちに帰りたい」
三人の男性はどうすればいいかわからない様子で、けっきょくあたしの願いを聞き入れてくれた。駅まで送ると言われたけど、あたしのおびえた顔を見て、それ以上あたしと関わろうとしなくなった。
どうやらここは空き家だったらしい。たまたま大家さんだか町内会長だかが業者をともなって家屋の状態を確認に来たのだ。おかげで助かった。
そのあと、どうやって家に帰ったのかは記憶があいまいだ。
あたしは援助交際をしてるようなビッチだ。援交でレイプごっこをすることもある。お客さんは激しく燃えてくれるし、あたしも楽しんでる。もう大丈夫だと思ってた。
でも、ぜんぜん克服できてなかった。
[援交ダイアリー]
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