美緒の死を目の当たりにして、いま自分が噛み砕かれようとしているのに、どうして性的な快感を感じてしまうのか。ライオンに生きたまま貪り食われるガゼルは痛みを感じることなく、脳内麻薬のせいでむしろ快感に恍惚となっている、という話を彩香は思い出した。
食べられる前に襲ってきた黒い男根と違って、怪物の体内に生えている白い触手は盛んにピストン運動をしてくる。
ぬるぬるする触手がアソコの中を上下する。
時計の秒針のようなリズムで――。
ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ、ズンッ!
ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ、ズンッ!
しばらくすると触手は動きを止めて、アソコの中で脈打った。
ビクンッ、ビクンッ、ビクンッ。
そして彩香の中から出て行くと、待ち構えていた別の触手たちが群がり、中に入ってくる。入ってきた触手がピストン運動を繰り返す。
ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ、ズンッ!
ぎゅっ、ぎゅっ、ぎゅっ、ズンッ!
体に巻き付いている触手が彩香の乳首をもてあそび、全身を愛撫する。
ときおり彩香は背中を駆け抜ける快感に全身を硬直させる。
その瞬間、アソコがギュッと締まり、触手のストロークを止める。
硬直がおさまって力が抜けると、すぐに激しいピストン運動が再開する。
その動きと連動するように、お尻の穴に入り込んでいる触手がピストン運動をする。
奥が行き止まりになっているアソコとちがって、お尻の穴は深い。
ズルズルズルッ、と、奥の奥まで挿入され――。
ズズズズズッ、と、一気に引き出される。
触手が出て行くとき、肛門が熱く感じるほどの快感にさいなまれる。
口の中に挿入された触手は彩香の舌をクニュクニュともてあそぶ。
はげしく何度もイキつづけているせいで息ができない。
グチュッ、という音がして、ドロリとしたものが顔にかかった。
イチゴジャム。
内蔵を潰されたのか。
けれど、快感以外の何も感じない。
井戸に落ちて底から見上げているように、頭上に丸い口が見えた。
口は閉じたり開いたりしながら、次第にちいさく遠くなっていく。
これがあたしが目にする最後の光景になるのか……。
美緒……。
あたしもあなたが好きなのだと――。
恋愛、という意味での『好き』なのだと――。
せめてひとこと伝えたかった。
意識が遠のいていく。
体が落ちていくような感覚。
怪物の口が閉じ、光が閉ざされた。
暗闇の中でなおも落ちていく。
そして何も感じなくなった。
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