レオくんがあたしの首筋にキスをした。電話口に顔を近づけて聞き耳を立てている。
「いまから帰るよ」
則夫さんが続けた。
「きょうはいつもより帰りが早いんだね」
「ああ、思ったより仕事が早く終わったんだ。早く奈緒美に会いたいよ」
「うん、あたしも早く会いたい。帰り道、気をつけて……、ね、ひゃうん!」
レオくんに乳首をくりくりされて、思わず声を上げてしまった。
もう! レオくんのいたずらっ子め。
「うん? どうかしたの?」
「な、なんでもないよ。じゃあ、待ってるからね」
「ああ、後でな」
則夫さんが電話を切ったのを確認すると、あたしも電話を切った。
それからレオくんの両肩を押さえて引き離すと、レオくんをとっちめようと体を起こして、逆にレオくんを押し倒した。騎上位の体勢でレオくんを下に組み敷きながら、あたしは思わず笑いを漏らした。レオくんも笑いをこらえている。
「こらぁ、レオくん、ダメでしょ。あんなことしちゃ」
「ごめんなさい、奈緒美さん。ご主人、変に思わなかったですか?」
「変に思ったに決まってるじゃない。まあ、まさかこんなことになってるなんて思いもしないでしょうけどね」
あたしはレオくんにキスすると、腰を揺すった。互いの両手の指を絡め合い、だんだんと動きを速くする。あたしのバストがゆさゆさと揺れる様子を、レオくんに見せつけた。きょうはこれが最後のセックスだ。
則夫さんが地下鉄に乗って帰宅するまで三十分ほどかかる。
それまで、もう少しだけ……。
「名残惜しいな。ねえ、レオくん、明日も来てくれる?」
「学校がありますよ」
「さみしいよ。また会えるっていう約束がほしい。そうだ、あたしがレオくんの大学に遊びに行ってみようかな。あたしだって女子大生のひとたちと同じ歳なんだし。別におかしくないよね」
レオくんは照れたように笑った。
「学校でデートしてたら友だちの理紗子さんとかに見られちゃいますよ」
「むぅー。そんなの気にしないのに。じゃあ、ふたりでどこかに遊びに行こうよ。週末以外に学校を休める日はないの? 大学生って学校さぼってばかりなんでしょ? あたし、連れてってほしいところがあるんだ」
「どこ?」
「ラブホテル」
あたしは少し恥ずかしくなって目を伏せると、
「あたし、ラブホテルって……、うっ、行ったこと、ないんだ。大きなベッドに……、広々したバスルームがあるんでしょ? メルヘンチックでかわいいお部屋がいいな。そんなホテルで……、レオくんに思いっきり……、抱かれてみたいの」
湧き上がる快感にむせびながら切れ切れに言うあたしを、レオくんはいとおしそうにながめた。
「わかりました。奈緒美さんの望みは何だって叶えてあげます。夢の国のようなホテルで愛し合いましょう。学校にも遊びに来てください。他人の目なんて気にせずにデートしましょう。奈緒美さんのことが好きです。これからたくさん作りましょう、ふたりの時間を。ぼくたちには時間はいくらでもありますよ」
「大好き、レオくん」
そう言ってあたしがレオくんに抱きついてキスをした瞬間、玄関の呼び鈴が鳴った。
[新婚不倫]
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