第14話 童貞のススメ (15)

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 先にシャワーを浴びようというので、あたしが先に済ませた。タオルで体を覆ったままベッドに入り、全裸で高梨さんを待った。

 思い込みの激しい高梨さんは、レンタル彼女としてデートした相手が自分に本気で惚れてしまったと思ってる。女性経験のない人は色恋に弱いものだけど、ここまで勘違いしてしまう人もそうそういない。だけど、お金をもらった分はちゃんと付き合ってあげる。

 シャワーを終えた高梨さんが部屋に入ってきて、すばやくベッドにすべりこんだ。

 無言で見つめ合う。

 そしてキス。高梨さんは最初から舌を挿れてきた。片手で肩を抱いて、もう片方の手で乳房を揉む。相当興奮してるのか激しい動きだ。これはAVで勉強した結果だろうな。童貞くんにはありがちだけど、初めてだと思われたくない見栄があるんだ。経験がないから教えて欲しいと素直に言った方がいいんだけどね。

 こんどは手マンを始めた。指を入れようとしてくる。童貞くんはヘタで痛いので、これをされるのは好きじゃない。高校生や中学生の男の子なら「お姉さんが教えてあげる」というスタンスも取れるけど、いまのシチュで成人男性だとプライドもあるだろうしなぁ。こちらがリードするのはやりにくい。

「ねえ、あたしが上になってもいい? 大樹さんのこと気持ちよくさせてあげたいの」

 この言い方で高梨さんは素直に従った。仰向けに横たわった高梨さんの上に体を重ねる。乳房を押し付けながらディープキス。太ももをこすりつける。またたく間にアレが大きく硬くなった。手で刺激してあげると高梨さんが時折ピクピクと体を震わせる。あたしのテクニックに圧倒されてるのが伝わってくる。もうなすがままだ。

 いよいよ挿入。高梨さんは枕元に用意してあったコンドームを手に取った。あたしはそれを奪い取って放り投げた。

「大樹さんとのあいだに壁があるのはイヤ。二人の距離を0.00ミリにしようよ」

 アレに手を添えて位置を合わせ、騎乗位でゆっくり腰を落とす。ずぷずぷとアレがアソコにめり込んでくる。奥まで入ったら、しばらくじっとして馴染ませる。

 高梨さんの手を取って指をからませた。膝立ちの姿勢でゆっくり前後にグラインド。さいわい、暴発も中折れもない。高梨さんはうっとりとあたしを見上げてる。やがて高梨さんも下から突き上げるように腰を動かし始めた。そして――。

 高梨さんが全身を硬直させた。アソコでアレがわんわんと脈打った。あたしも背中をのけぞらせて全身を震わせた。

 ちいさくなったアレを抜いて、また高梨さんに抱きついてキスをした。

「セックスしちゃったね。すごく気持ちよかった……。あたし、イッたのかな……?」

「ぼくも気持ちよかった。実はセックスするの初めてで……。想像していたよりずっと気持ちよかった。沙希ちゃんのことが好きだ。ちゃんと責任は取るから」

 それを聞いて、あたしは高梨さんの胸に顔をうずめて嗚咽をもらした。

「さ、沙希ちゃん?」

「大樹さん……。どうしよう、あたし……。大樹さんがこんなにあたしのことを想ってくれてるって知ってたら、朝岡さんとあんなことしなかったのに……」

「え? あいつと何かあったの?」

「おととい、朝岡さんに呼び出されて……。あたし、母子家庭だから家計を助けるためにレンタル彼女をやってるの。朝岡さんに相談に乗るよって言われて……。裏オプなんてないって言ったのに。二十万円入った封筒を出されて……。それで、あたし……、お母さんがいつも仕事で大変な思いをしてるから、あたし……、あたし……。ごめんなさい……、あたしは初めてじゃないの」

 高梨さんはあたしが援交してることには気づいてない。レンタル彼女に裏オプはないのは学んでる。あたしが処女じゃないと知って、ちょっとショックを受けた様子。ほんの数日前に親友に寝取られたとあれば当然だ。

「大樹さん、もっとして。あたしの中からほかの男を追い出して」

 二回戦は対面座位、その次は屈曲位でセックスした。その頃には暗くなりかけていた。時計を確認する。朝岡さんは館山だと言っていたから、そろそろだ。

 全裸で高梨さんと抱き合ってベッドでまどろんでいるとき、ドアのロックがはずされる音がした。ドアが乱暴に開けられる音がつづく。読み通りの時間。玄関には女子高生のローファーがある。それを見たら朝岡さんは――。

「沙希!」

 駅から全力で走ってきたのだろう。朝岡さんは汗びっしょりで目をむいていた。

「あ、朝岡ッ、いったいどうして。お前は館山にいるはずだろ」

 乱入してきた朝岡さんを見て、高梨さんは何が何だかわからない様子。

「高梨ッ、お前、沙希を部屋に連れ込むために俺にリゾートバイトを紹介したんだな」

「お前こそ、沙希ちゃんに無理やり性行為を迫って、レイプ同然でヤッたんだろ」

「沙希は俺の女だッ」

「馬鹿言うな。沙希ちゃんはぼくの彼女だッ」

 うわぁ……。二人とも思い込みがヒドイわぁ。もしかして、童貞くんのガチ恋を甘く見てたかもしれない。これは早めに種明かししないと血を見るな。

 でも、なんて説明すればいいんだろう。

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