人妻セーラー服2 (08)

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「許してください、くるみさんッ! 出来心だったんですッ!」

「ちょ、ちょっと、きみ……」

 通行人の注目を集めてしまってオロオロするくるみ。

 凶悪な痴漢だと思っていたのに、こんなふうに謝られるというのは予想外。出来心だったというのも認めたくなる。

「とにかく、顔を上げて。みんな見てるよ……」

 政宗くんが顔を上げると、くるみのミニスカートの中が丸見えだった。

(はうぁぁー、またしてもくるみさんの純白のパンツが……!)

 目を見開いて顔を赤くする政宗くんに、くるみはスカートを手で押さえた。

「見るなーっ!! バカモノッ!!」

 言いながら、くるみは政宗くんの頭を踏んづけた。

 とにかくこのままでは目立ちすぎる。くるみは政宗くんと駅前広場の隅に移動した。

 ここは大人としてお説教のひとつもしてあげなくちゃいけない。

 くるみは仁王立ちになって、政宗くんの鼻先にビシッと人差し指を突きつけた。

「きみ、ダメでしょ。女の子に痴漢なんかしちゃ」

「は、はいッ。すべて自分の不徳の致すところでありますッ」

 政宗くんは自分のしたことを反省してうなだれていた。

 そんな顔をされたら調子が狂う。どうやら本気で反省しているみたい。くるみもどんなふうに叱ればいいのか分からなくなった。

「きみ、龍星高校の生徒でしょ? 何年生? 名前は?」

 そう尋ねられて、政宗くんは恐怖に顔をゆがめた。いままで考えもしなかった可能性に

思い当たったのだ。自分はインターハイ予選を控えた身。ただの不祥事では済まない。

 いまから逃げればなかったことにできるかもしれない。しかし、これ以上の恥の上塗りは許せなかった。

「龍星高校二年、南雲政宗ですッ。ど、どうかッ、学校には通報しないでくださいッ」

 政宗くんは体を九十度に折り曲げて頭を下げた。

「きみのしたことは性犯罪だよ。出来心だったで済む話じゃないんだけど」

「どんな償いでもしますッ。くるみさんの気が済むようにして構いません。ですが、どうか学校には黙っていてください」

「それよ。どうしてきみはあたしの名前を知ってるの? ていうか、頭を上げてよ。また注目されちゃうじゃない」

 政宗くんは観念した。もうすべてを話すしかない。

 体を起こし、どんな結果も受け入れようと心を決めた政宗くん。おかげですこし心が落ち着いてきていた。

「自分は先日、電車の中であなたを見かけて……、その……、気になった、というか」

「あたしに一目惚れしたってこと?」

 もしそうなら断らないといけないけど。だって、結婚してるんだもの。

「その……、自分にはよく分かりません。くるみさんの名前は、ケータイで話しているところを聞いてしまって知りました。とにかく、あなたのことが頭から離れず、もしもまた会えたならと思っていたのですが、きょう街でお見かけし……。それで電車に乗ったあなたを追いかけて、思わず……」

「思わず抱きついてパンツの中に手を入れてきたってわけね。そもそも、あたしに会えたらどうしようと思ってたのかしら。告白するつもりでもなかったみたいだけど」

 政宗くんは狐につままれたような顔になった。

(くるみさんに会って、自分はどうしたかったのか? 手紙には何を書いた?)

 政宗くんが手紙に書いたのはいま話したのと同じようなことだった。たまたま見かけたあなたのことが気になって夜も眠れない、電話番号を教えるので連絡ください、みたいな。

 いやー、そんな手紙を渡したらやっぱマズイわ。渡せなくてよかったよ。

 男は街ですれ違っただけの女の子に一目惚れしてしまうことがある。熱病に冒されたように、その子のこと以外考えられなくなっちゃうんだ。政宗くんのはまさにそれ。まあ、男の一目惚れというのは、この子とヤリたいという衝動でしかないけど。恋愛経験のない政宗くんは自分の心に何が起きたのか分かっていなかった。

 政宗くんに分かっていたのは、くるみのせいで試合に負けそうだということだけ。

「自分は剣道部の主将で、週末にはインターハイの県予選があります。しかし、くるみさんに出会って以来、試合で勝てなくなってしまった。この状況を打開するためにはあなたに会って話さなくてはならないと思ったのです」

 さすがに、あなたをオカズにしています、と言わないだけの分別はあったようだ。

 くるみはすこし考え込んだ。この政宗くんの悩みは要するに、煩悩のせいで集中できないというだけの話。くるみにとってはどうでもいい話だった。でも――。

 ここでまたくるみのいたずら心が頭をもたげてきた。

「なるほど。きみの抱えてる問題は分かった。解決に協力してあげる。そういうわけだから、いまからラブホテルに行こ」

「は?」

「あたしの気が済むようにしていいんでしょ?」

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