第13話 目覚めた少女たち (07)
夕方、全裸のまま美菜子ちゃんとふたりで夕食を作った。
一条さんは寝室のベッドで眠りこけている。無理もない。合計七発も出して打ち止めになったんだ。当分は起きてこれないだろうな。
先に食事を済ませて後片付けをした。
そのあとクローゼット部屋でごそごそやっていた美菜子ちゃんが、
「沙希ちゃん、ふたりでこれを着てみませんか?」
と言いながら出てきた。
両手に真っ白な二着のドレスを抱えている。ウエディングドレスだった。美菜子ちゃんのお父さんはコスプレ用のドレスをいくつも用意してたんだよね。
フィッシュテールのAライン、肩が露出してフリルもたっぷり。ストッキングはもちろん、ベールとグローブもある。
「かわいい! 着てみたい。でも、結婚前にウエディングドレスを着ると婚期を逃すって言うよ?」
「わたしは結婚なんてしませんよ」
美菜子ちゃんは屈託のない笑顔で言った。結婚なんて心底バカらしいと思っている様子。
「あたしは結婚したいな。こんな子は誰ももらってくれないかもしれないけど」
「沙希ちゃんなら、その気になりさえすれば結婚できると思いますけど。一条さんだって、昼間、沙希ちゃんに花嫁になってほしいって言ってたじゃないですか」
「あの人はお客さん」
あたしが肩をすくめてみせると、美菜子ちゃんは心配そうな表情になった。
「沙希ちゃんは恋をしたいから援交してるって言ってましたけど、一条さんに恋をしてるんですか? もし、沙希ちゃんが一条さんのことが好きで、一条さんと恋人同士になるなら、わたしはもう会わないようにするので……。もともと沙希ちゃんのお客さんですし」
「抱かれてるときは恋してる。でも、あたしは魅力的な男性に抱かれると誰にでも恋しちゃうから。あの人だって本気であたしに恋なんてしない。だから気にする必要ないよ。せっかくの太パパじゃん」
お金の話になると美菜子ちゃんは恋バナには興味をなくしたらしい。
「わたし、一条さんからもう五百万くらいもらっちゃってるんですけど……。大丈夫なんでしょうか」
「自由に使えるお金が五千万円あるとしたら、一回二十万で毎週二回しても二年半はもつ計算だよ。卒業するまであたしたちを買い続けたとしても、一条さんには痛くも痒くもない金額だって」
あたしはニヒヒと笑った。
「わたしはいっぱいお金を稼ぎたいです。一条さんは上客ですけど、いまみたいなペースで会ってたら、じきに飽きられちゃいますよね。加減が難しいです」
「そうだね。だけど、払える人を選んで遠慮なく高値を言う。その代わりしっかりサービスする。後腐れなし。それが援助交際をうまくやる秘訣。あたしたちにはそれだけの価値があるんだ。安売りすることない。買ってくれないなら、それまでの話」
ウエディングドレスを着てみた。
コスプレ用だからなのか、前上がりのスカートは股間が見えそうなくらい。胸元も大きくえぐれてる。でも、ロンググローブにベールも付けると、かわいい花嫁さんになれた。姿見の前で何度もポーズを取ってみる。
美菜子ちゃんもすごくキレイだった。
「あたしたち、さっきまで同じ男の人に抱かれてたんだね」
「なんだか不思議な気持ちですね。わたしはいま、毎日がとても楽しいです。これはぜんぶ沙希ちゃんがくれたものです。ありがとう、お友達になってくれて」
「あたしも、美菜子ちゃんと友達になれてうれしい。ずっと仲良くしてください。健全なときも病んでるときも」
「悦びのときも悲しみのときも」
「あなたを愛し」
「あなたを敬い」
「慰め、助け」
「命あるかぎり、友情を誓います」
「誓います」
息がかかるほど近くで見つめ合う。美菜子ちゃんを愛しいと思う気持ちが胸の奥に湧き上がってくる。泣きそう。
美菜子ちゃんのやさしい微笑み。
キスをした。
嫉妬の気持ちはなくなっていた。
美菜子ちゃんのことをいままで以上に好きになっていた。
一条さんが起きてこないので、あたしと美菜子ちゃんはリビングのお姫さまベッドに寝転がった。ウエディングドレスを着たまま、抱き合ってキスをして、お互いを求め合った。女の子同士だから終わりがない。ふたりとも何度もキスでイッた。
そうしてあたしたちは眠りに落ち、夢の国で結ばれた。
[援交ダイアリー]
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