「それって秘訣と言えるんですか?」
「はっはっはっ。知り合って、だんだんと親しくなっていくじゃない。そのうちに相手もこっちのことを好きなんだなって、わかるときがくるんだよ。あとは想いを口に出して言うだけ。告白は互いの気持ちを確認するための儀式なんだ」
告白が成功する秘訣があるなら後学のために聞いておこうと思ったけど、なんだかあんまり役に立ちそうにない気がする。
「だけどさ、女同士の場合はそれでもうまくいかない場合があるんだよね。あたしは女同士の友情は、恋愛と地続きだと思ってるんだ。そこを行き来できる子もいれば、できない子もいる。それはしょうがないことさ」
お父さんは部屋に引きこもってるし、あずきさんともなかさんはうまく行かない。わたしがこの別荘にやってきたことで、みんなの生活を壊してしまったのかな。こんどの週末には家に帰ることになってる。わたしはお父さんとメイドさんたちを引っ掻き回して苦しめただけなのかもしれない。
その日の晩ごはんはあずきさんとふたりで食べた。明るく振舞ってるけど、やっぱり辛いんだろうなと思うと、あまり話もできなかった。
夜になって、いつものようにベッドに寝そべって、もなかさんが来るのを待っていた。ところが、枕を持ってやってきたのはあずきさんだった。
「きょうはあたしが一緒に寝てもいいかな?」
あずきさんはブルーのパジャマを着ていた。ベビードール風トップスにショートパンツのかわいらしいデザインだ。
「もなかから聞いたんだけどさ、莉子ちゃん、もなかと裸で抱き合ってキスしたんだって?」
あずきさんがわたしに抱きつきながら言った。
「いや、あの、それはっ。……ごめんなさい」
「あはは、謝ることないよ。莉子ちゃんはあたしとだってキスしてるし。あたしは高校生の頃は、いろんな女の子と付き合ったし、同年代の子だけじゃなくて年上のお姉さんとも恋愛したよ。エッチなことだっていっぱいしたしね。男性経験はないけど、ディルドは使ってたから、正確にはバージンとは言えないのかな。上になったり下になったり、いろいろね」
あまり考えたことなかったけど、レズビアンの場合、男役と女役がはっきり分かれてるものなのかな。あずきさんは、どちらの役もこなせるってこと? わたしは女同士だったらどっちの役回りになるんだろう。
「わたしも女の人とセックスしてみたいわ」
「あたしでよかったらいつでもお相手するわ、莉子ちゃん」
あずきさんの言葉に思わず固まった。
あずきさんとだったら本格的なエッチをしてみたい。でも、あずきさんはもなかさんにフラれた寂しさを紛らわせたいだけなのかも。もしそうなら、あずきさんの気持ちにつけこむような形でセックスしたくはない。
「寂しいから言ってるんじゃないよ。すこしでも女同士のことに興味があるなら、気持ちを共有したいからだよ」
あずきさんがわたしの心を読んだように言った。
わたしは小さくうなずいた。
「教えて、あずきさん」
わたしたちは抱き合って唇を重ねた。
わたしはバイセクシャルになりたい。ママがそうだから。ノンケだったりレズビアンだったりバイセクシャルだったりというのは、なりたいと思ってなるものじゃないけど、わたしは男の人とも女の人とも愛し合いたい。
だから女同士のセックスに抵抗を感じていない自分を誇らしく思う。
Copyright © 2011 Nanamiyuu