彩香はセックスでイッたことがない。セックスが楽しいと感じたことがない。男に抱かれることが気持ちいいと思ったことがない。けれど、世の中そんなものだろうと思っていた。男を好きになって両想いになって結婚する。そんな世間並みのちいさな幸せでみんな満足しているのだろうし、自分もそうなるだろうと思っていた。
いま彩香は確信めいた予感を感じている。
この怪物によって初めて『イク』という体験をさせられるのだという予感を。
しかも、その予感に胸を高鳴らせている。
ありえないことだ、と彩香は頭をぶんぶん振った。
いくつもの舌が乳房を舐め始めた。
揉みまわすように。
下から持ち上げるように。
きゅっと押さえつけるように。
ゆっくりと円を描くように乳首へと近づいていく。
「んん……、んん……」
太ももを舐めていた舌の群れが徐々にアソコに迫ってくる。
お腹を舐めていた舌の群れが徐々にアソコに迫ってくる。
チョコレートと生クリームで覆われた彩香の股間を、舌からあふれだす粘液と、彩香のアソコからあふれはじめた愛液が、ねっとりと濡らしていく。
快感を感じるのはおかしい、感じてはいけない――。
そんなわずかに残っている理性を、生クリームと粘液の甘い香りが溶かしていく。
きっと媚薬が混ぜてあるのに違いない、と彩香はかすかに思った。
「んんっ、んんっ……」
口の中が粘液で一杯になり、たまらず飲み込んでしまった。
お酒を飲んだときのように、胃が熱くなった。
そのとたん、体の感度がアップしたように感じられ、快感が加速した。
全身を舐められる愛撫はますます激しくなる。
ついに舌が彩香の乳首に達した。
「んんーっ! んん、んん……、んーっ! んんーっ!」
突然全身を駆け抜けた電撃のような快感に、彩香の体が硬直した。
その直後、アソコを舐められて、彩香は快感に背中を反らせた。
「んんんーッ! んんんーッ! んーーーッ!」
何十という太い舌に全身を舐められつづけ、息をすることもできない。
人間の男とのセックスではありえない愛撫。
いくつもの舌がびらびらを撫でながら左右にこじ開け、別の舌がその真ん中をクリトリスから肛門にかけて舐めてくる。
さらに別の舌がクリトリスをそっと舐める。
さらに複数の舌が肛門をくりくりと舐める。
アソコに舌を入れてほしい。
けれど、怪物は執拗にじらす。
彩香は触手に巻きつかれてほとんど動かせない腰を振って、アソコを舌に押し付けた。
気持ちいい。
肛門に舌を入れられそうな気がして、きゅっと穴をすぼめた。
けれど、怪物は彩香のお尻の穴に舌先をねじこんできた。
こっちも気持ちいい。
乳首への愛撫もつづいている。
押されたり、転がされたり、はじかれたり。
気持ちよくてたまらない。
彩香は苦痛に思えるほどの快感に、目をぎゅっと閉じた。
その両目から涙があふれた。
全身が快感に飲み込まれていく。
受け入れてはいけない、抵抗しなくてはいけない。
頭ではわかっているのだが、下半身がピクピクと震えて力が入らない。
力は入らないのに、背中がのけぞって全身が硬直する。
とぎれとぎれに呼吸をするたびに愛液がジュッとあふれだす。
心臓がバクバクと跳ねる。
脚がガクガクする。
これまでの人生で味わったことのない圧倒的な快感。
もう限界だと思うのに、まだその先へと突き進んでいく。
彩香にはわかっていた。まだ前戯にすぎないことが。
彩香には確信があった。もっと強く、もっと深い快感が待っていることが。
無意識に腰を前後に揺する。
挿れてほしい。
挿れて。
早く挿れて。
もう、これ以上じらさないで。
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