第14話 童貞のススメ (02)
川口さん――、川口はゆっくりと車を走らせた。
この男は最初からあたしをだましてたんだ。手配師だったなんて。出会い系で少女を釣って客に抱かせる。いや、強姦魔のおもちゃにさせる。しかも、こいつら常習犯だ。口封じに何をされるかわかったものじゃない。
あたしは恐怖ですくんでしまい、体を揺する以上の抵抗ができなかった。
落ち着いて対処すれば切り抜けられるはずだ――。そう頭で言い聞かせても体が言うことを聞かない。
援助交際をしてれば危ない目に遭うことだってある。前にも拉致されたことがあるし、暴力で犯されたことだってある。切り抜けてきたし、乗り越えてきた。
なのに今回は正気を保てなくなりそうなほど怖い。心と体に刻みつけられた古くて暗い傷がぱっくりと開いてしまったように、理性ではどうしようもできない何かがあたしにのしかかってきていた。
レイプトラウマ。もう大丈夫だと思っていたのに。
あたしはこれからこの男たちに強姦される。
何をされるのかわかってる。
どんなに抵抗しても無駄だということを知ってる。
無力なあたしにできることは、ただ早く終わってほしいと祈ることだけだ。
やがて車が停止した。エンジンが切られたので目的地に着いたのだろう。袋をかぶせられているので、どこをどう走ってきたのかわからない。走っていたのはほんの数分だったのかもしれないし、一時間以上たってるのかもしれない。頭がボーッとして何も考えられなかった。
あたしは車を降ろされ、男たちに引っ張られて歩かされた。ドアが開く音がしたので建物の中に連れ込まれたらしいとわかった。何度かちいさな段差に躓きながら、よろよろと進んだ。最後にあたしは突き飛ばされて、その場にころんだ。マットレスが敷かれていたのでケガはしなかった。
頭にかぶせられてた袋が取り去られた。
窓のない部屋だった。八帖ほどの広さの床張りで、古びたソファとちいさなテーブルのほかに家具はない。工事現場で使うような、三脚に取り付けられた照明器具が三つ、まばゆい光を放っている。
三十代か四十代とおぼしい三人の男――口ひげとスキンヘッドと小太り――が、薄笑いを浮かべてあたしを見下ろしていた。川口はすこし離れたところでビデオカメラの準備をしてる。
口ひげの男が近づいてきてしゃがみこんだ。あたしは震えながら顔をそむけた。
「沙希ちゃんといったか? 俺たちはいまからお前を集団レイプして、その一部始終をビデオに撮る。大声を出してもいいし、抵抗してもいい。フフッ、その方がこっちも燃えるしな。だが、この部屋は防音になっているから、お前の悲鳴は誰にも届かない」
言いながら、あたしの口をふさいでいたガムテープをビリッと剥がした。ヒリヒリする痛みも恐怖で掻き消える。
「イヤ……、変なことしないで……、おねがい……」
かすれた声で懇願するけど、受け入れられるはずもない。
男がナイフで手首の結束バンドを切ると、それが合図となって男たちが襲いかかってきた。
二人の男に左右から腕を押さえつけられた。脚をばたばたさせるともう一人の男に脚も押さえつけられた。制服の上から乱暴に胸を揉まれた。
「いやァ、ヤダ……、ヤダァ……!」
川口が手にしたビデオカメラが冷たくあたしを捉える。仕事だから仕方なくやっているという表情。この男は本当に少女には興味がない様子だ。
スカートの中に手を入れられ、パンツごしにアソコをこすられる。
ぶちぶちっ、という音がしてセーラー服の胸当てを留めているスナップボタンが引きちぎられた。前開きのファスナーを下ろされて、肌があらわになる。
ブラジャーを上にずらされて、乳房をぎゅうぎゅうと揉まれた。乳首をぐりぐりといじられて痛い。
「たまんねぇ、女子高生の素肌。オラッ、こっち向け。キスさせろ」
あごを押さえられて舌を押し込まれた。ちゅばちゅばと音を立てて舌を吸われた。
そのあいだにも別の男の手がパンツを脱がしていく。
必死に抵抗したけど、三人がかりで押さえつけられていてはどうにもできない。
一人があたしの乳首を吸い始め、すぐに別の男がもう片方の乳首を舐めてきた。
「イヤ、やめて……、やめて……、お願い、家に帰して。もうヤダ、ヤダァ……」
「心配するな。さんざんヤリまくったあとで、夜には解放してやる。もっとも、そのころにはお前の体はチンポ漬けになって、もっと犯してください、もっともっとイジメてください、そう自分から求めるようになっているがな。ウソじゃねえ。いままでヤッたJKはみんなセックス中毒で裏フーゾクに堕ちた。お前もそうなる」
その声はどこか遠くから聴こえてくるように感じた。
いま起きていることの現実感が急に薄れていきはじめた。
[援交ダイアリー]
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