「沙希、お父さんはお前のことを愛していたんだ。本当に大切に思っていた。お前には伝わっていなかったのかもしれないが」
「わかってたよ。お父さんはあたしのことが好きだって。あたしもお父さんのことが大好きだったんだよ」
「だけど、お前は日記に、お父さんなんか大嫌い、と書いていたじゃないか」
「嫌いな人のことを日記に書くわけないじゃないの。『大嫌い』って言葉は『大好き』っていう言葉と同じ意味なんだよ」
いつのまにか、娘さんが乗り移ったように話していた。娘さんの気持ちがわかるような気がした。村岡さんも、あたしを通して本当の娘さんに語りかけている。
「大好きよ。生まれてきて、お父さんと出会えて、お父さんのことを好きになれた。それがすごくうれしいの。お父さんはあたしと出会えてうれしかった?」
「もちろんだ。沙希が生まれてきてうれしかった」
村岡さんのことをぎゅっと抱きしめた。
「援助交際をしてるあたしをお父さんが責めるのは当然だと思う。後悔だってするかもしれない。だけど、こうしてお父さんと愛し合えるのなら、どんな後悔だって帳消しにできる。援助交際という形でしかできない出会いがあるんだよ。だから――」
またキスをして、正面から村岡さんを見つめた。
「ふたりで気持ちよくなろうよ」
「沙希……。沙希ちゃん……」
村岡さんの表情がふっと変化した。すべての心配ごとが消えてなくなったような、やすらいだ顔だ。ずっとむかし、まだ小さかったころにお父さんに抱っこされたときのような気持ちになった。
「沙希ちゃん。きみは可愛らしくて心のやさしい女の子だ。きみが言うなら、娘はお金が欲しくて体を売っていたわけじゃないんだと信じられる」
「きっと村岡さんは娘さんのために最高のことをしてあげたんだと思います。父親として変わらない愛情を注いであげたんだと思います。娘さんも心の底ではそのことをわかっていたはずです」
「沙希ちゃん、きみと出会えてよかった」
村岡さんの方からキスしてくれた。愛情に満ちたやさしいキスだ。
繋がったままうしろに倒された。対面座位から正常位になる。ぎゅっと抱きしめられて、舌を吸われた。
美星沙希というひとりの女の子として受け入れてもらえたんだ。
自信を取り戻した村岡さんの愛撫を受けて、またたく間に快感が急上昇した。
無意識のうちにアソコがアレを締め付けている。
たくましいアレが子宮口をぐいぐいと押してくる。
あたしは奥がいちばん感じるんだ。クリトリスよりGスポットより、ずっと気持ちいい。男の人のアレで奥の方を愛撫されてはじめて到達できる最高の快感。そこまで連れてってくれる人は滅多にいない。
おなかの中にぞくぞくするような気持ちよさがあふれてくる。
喘ぎ声をあげて村岡さんにしがみついた。
もっともっとぴったりくっつきたい。
密着したい。
隙間をなくしたい。
体がビクンッビクンッとはねる。
ブルブルッと痙攣する。
快感の波が止まらない。
村岡さんの腰の動きが速くなっていく。
息ができない。
感じすぎて苦しい。
頭がぽーっとなって、なにも考えることができない。
突然、すべての苦痛が消えた。突き抜けた。快感だけにつつまれた。
ふわふわする。
ぽわぽわする。
頭の中が真っ白になった。
その状態がずっとつづく。
「あ……、ああ……」
おなかの中が熱くなった。じわーっと広がっていく。アレがびくんびくんと脈打ってる。
キスされた。
これ以上ないくらいしあわせ。
まだ出て行かないで。
アレはまだ硬いままだ。もっと欲しい。もっと繋がっていたい。
いつの間にか泣いていた。喘ぎ声をあげながら、しゃくりあげた。
村岡さんがふたたび腰を動かし始めた。
安心感につつまれた。
愛してる。
この瞬間のために、あたしは生きてるんだ。
[援交ダイアリー]
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