パニックを起こして絶叫した。
アレを抜こうとお尻を揺すった。
「暴れるな、沙希。あっ、またよくなってきた。出る。出るぞ」
「だめぇぇぇっっ! 外に出してっ!」
田辺さんがあたしのお尻を押さえて、腰を密着させた。アレが子宮口を押してくる。
「ああ……、いやぁ……」
あたしの中でアレがビクンッビクンッと脈打ってる。
射精されてる!
全身の毛が逆立った。
「おおっ、沙希のおまんこが俺のチンポを絞めつけてくる。お前が動くから中に出しちまった。ああ、気持ちいいッ。沙希ッ、沙希ィッ。いいぞ、お前のおまんこ、最高だ」
「う……、うわああああぁぁぁっっっ! やだ、早く抜いてよぉ! 早く、早く! 出てって! あたしの中から出てってよ!」
田辺さんは精液をぜんぶ出しきろうとするように腰を揺らした。あたしにはどうすることもできない。
「バカァッ! いやだ、いやだぁ! もう中絶するのはいやだ。妊娠したくない。助けて、誰か助けて。もういやだ。うわああぁぁぁっ! いやあああぁぁぁっ!」
シーツに顔をうずめて半狂乱になって泣き叫んだ。
田辺さんがアレを抜いてあたしの肩に触れた。あたしは体を揺すって抵抗した。田辺さんは全身でぎゅうっとあたしを抱きしめてきた。
「落ち着け、沙希。大丈夫。大丈夫だ。いまのはプレイだよ。中出しはしてない。コンドームをちゃんとつけてるし、破れてもない。だから大丈夫」
そう言うと、あたしをベッドに縛り付けている三角タイをほどいた。
両手が自由になると、あたしは勢いよく体を起こした。田辺さんのアレにはコンドームがかぶせられていて、先端に白い精液が溜まっていた。アソコも確かめた。指を入れてみたけど、中に精液はない。確かに中に出されてはいなかった。
ぜんぶ田辺さんの演技だったんだ。
「ごめん、沙希。お前があんまりかわいいから、からかったんだ。そんなに本気にするとは思わなかったよ」
それほど悪いとは思ってないような口調で言われて、あたしは頭にきた。
「子供だと思ってバカにしないでよ! あんたなんか大嫌い!」
「おいおい、お前だって援交してるんだし、男の部屋にのこのこ入ってきたんだから、これくらいのリスクは承知の上だろ?」
「何よ! あたしが悪いっていうの!?」
あたしが泣き止まないのを見て、田辺さんはため息をつくと、うんざりした様子でシャワーを浴びに行ってしまった。
ひとりベッドに残されたあたしは涙をぬぐった。
援助交際をしてるからどうだっていうんだ。
援助交際をしてる子なんて強姦されて孕まされても文句を言うなっていうのか。
バカにするな。
机の上で田辺さんのケータイのランプが点滅しているのが目に入った。メールが来ているんだろう。田辺さんがどういう人間なのかわかるかもしれないと思って、そのケータイを手に取った。あたしの持ってるケータイはぜんぶ認証ロックをかけてあるけど、田辺さんはセキュリティに無頓着だった。
女性からのメールが入っていた。
『きのう、フミくんの部屋にバッグ忘れちゃった。いまから取りに行っていい?』
彼女いるじゃん。
ほかのメールも読んでみた。深い関係なのは明らかで、しかも現在進行形だ。
あたしは急いで自分のワンピースに着替えると、田辺さんのシャワーが終わらないうちに部屋を出た。呼び止めようとする田辺さんの声を無視して駆け出した。
自宅に帰って、着替えもせずにベッドに突っ伏した。
完全にもてあそばれたんだ。
セックスの道具として扱われた。
怒りと悔しさで涙が止まらず、そのうちに疲れて寝てしまった。
冷静さを取り戻したのは翌日の朝になってからだった。
田辺さんは暴力をふるったりしなかったし、乱暴な愛撫もしなかった。それは認めなくちゃいけない。ストップワードの件でからかわれたのは腹立たしいけど、取り乱してしまったのはあたしの側の勝手な事情だ。
気持ちを切り替えると、田辺さんからお金を多くもらいすぎていることが気になりだした。四回分を前払いしてもらったけど、二回しかしていない。お金を払わない男を許せないのと同じように、サービスを提供していないのにお金をもらうのも気に入らない。あたし自身の信用の問題だ。
どうしようか考えていると、田辺さんからメールが来た。
『きのうはゴメン。沙希ちゃんに謝りたい。ぜひもう一度会ってください』
[援交ダイアリー]
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