「莉子ちゃんを犠牲にすることなんてできないよ。ぼくは……」
「いいえ。わたしも望んでいることなんです。初体験を栄寿さんとしたいんですよ」
栄寿さんの心がぐらぐら揺れているのは、目を見ればわかる。でも、まだ理性が残っているようだ。
栄寿さんが父親かもしれないという可能性には、わたしも興奮していた。運命って、あると思う。栄寿さんとしたい。
わたしは栄寿さんの理性を吹き飛ばすような手はないかと考えた。そして、できるだけ甘えた表情を作って、上目使いに見つめると、
「お願い、お兄ちゃん。莉子のこと、抱いて。お兄ちゃんが好きなの。エッチなこと、教えて欲しい」
うわぁ。言ってる自分の理性のほうが吹っ飛びそうだ。
でも、栄寿さんにも効き目があったみたい。
栄寿さんが荒々しいキスをしてきた。ぎゅっと抱きしめられて苦しいくらいだ。
「莉子ちゃん、ぼくはもうがまんできないよ。おかしくなりそうだ」
「大丈夫。これが一番いい方法なんです。わたしも早く初体験をしたい。これでみんなが幸せになれるんですよ」
栄寿さんはわたしのブラジャーを乱暴に剥ぎ取った。それから自分の着ているパジャマの上着を脱いだ。肌と肌が直接触れ合った。
わたしは床に押し倒されて、のしかかられるようにキスをされた。
(やったーっ、成功だぁ)
栄寿さんはハアハアと荒い息をしながら、かぼちゃパンツを脱がそうとした。興奮しているせいでうまく脱がせられない。わたしはお尻を持ち上げて、栄寿さんがパンツを脱がせやすいようにした。
栄寿さんはキスをしたまま、ズボンとブリーフも脱ぎ捨てて全裸になった。
抱きしめられて、キスを繰り返す。
ヘッドドレスとニーソックスは身につけたままだ。たぶん、そのほうが栄寿さんは興奮するんだろうな。
上に乗っかられているせいで、お腹が圧迫された。
う……、まずい……。
朝ごはんを食べてから、一度もトイレに行っていない。さっきの部屋でちびりそうなほど怖い思いをして、そのあと心底ホッとしたっていうのも影響してるだろう。
わたしは体をもぞもぞさせた。
わたしの様子が変なのに気づいたらしい。栄寿さんが体を浮かせて、心配そうにわたしを見た。少しばかり興奮が醒めてしまっているみたい。
どうしたの、という目で見つめられた。土壇場で怖気付いたと思われたかも。
わたしは恥ずかしくて死にそうな思いで、仕方なく本当のことを言った。
「おしっこ……、行きたくなっちゃった……」
ふにゅぅ、こんなときに。わたしのバカ。
栄寿さんが体を起こして、わたしから離れた。正気に戻っちゃったのかな。
「栄寿さん、わたし高校生になったら、いろんな人と、いっぱいセックスしたいの。でも、最初のセックスは栄寿さんとしたいんだ。だから、やめないで。エッチなことしたい。エッチなこと教えて」
急いでトイレに行ってこよう、と思って立ち上がりかけたわたしを、栄寿さんが抱きとめた。そのままお姫様だっこして持ち上げられた。
トイレまで連れていかれるのかと思ったら、栄寿さんは開け放しの窓からバルコニーに出た。バルコニーの端にあるテーブルのところまで歩いて行くと、椅子の上に立った。両方の太ももの下に手を入れる形に、わたしの体を持ち変えた。
わたしからはバルコニーの柵は見えず、目の前には水平線まで続く海が広がっている。
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