これが不倫した妻の末路なのかな。これが報いなのかな。
もしも。
もしも、あたしがもっと早く則夫さんに自分の気持を打ち明けていたら、こんなことにはならなかったのかもしれない。
ねえ、セックスしようよ。
もっと違うスタイルも試してみたいな。
こんどはあたしにリードさせて。
素直にそう言っていれば、あたしと則夫さんにはもっと違った未来があったのかもしれない。
甘い考えかもしれないけど。
手遅れかもしれないけど。
もしできることなら、やり直したい。
やり直すって何を? いまのあたしに何ができるっていうの? 則夫さんと過ごす時間はこれが最後かもしれないっていうのに。則夫さんはきっともうあたしのことを抱いてはくれない。女なんてみんな不潔なビッチだと思ってる? 男のひとがいいの? レオくんみたいな?
不倫相手が夫の元恋人だったなんて……。
レオくんと不倫したのはあたしなのに、レオくんに則夫さんを取られちゃうのかな。
だったら……。
バカだ、あたしは。
そんなことさせるもんか。
あたしはよろけながら立ち上がった。あたしは則夫さんに飛びついた。則夫さんをレオくんから遠ざけるように、ふたりの間に割って入る。
「往生際が悪いよ、奈緒美さん」
「レオくんに則夫さんは渡さない。則夫さんの妻はあたしだもの」
「奈緒美さんに妻を名乗る資格なんてありません。ノリちゃんがゲイだって知らずに結婚してたくせに。ノリちゃんは女より男のほうが好きなんですよ」
「そんなことない! あたしと則夫さんはすごくすごく愛し合ってるんだから! セックスだってあたしとするほうがずっと気持ちイイんだから」
「男どうしのほうが分かり合えるんですよ。ノリちゃんだってぼくのほうがいいでしょ?」
「そんなことないよね、則夫さん?」
則夫さんはうんざりした様子で大きくため息をつくと、
「ふたりとも、いい加減にしろ」
あたしとレオくんは黙り込んだ。
則夫さんの顔に怒りはなかった。疲れた表情。何を考えてるんだろう。
「奈緒美、お前は俺を裏切った。お前はそれが、俺とのセックスが物足りなかったからだというのか? 俺がお前を満足させてやれなかったからだと?」
落ち着いた口調で則夫さんが問いただした。
「それは……」
なんて答えたらいいんだ。
「レオのことが好きなのか? レオにそう言ったのか?」
則夫さんは横から口だししようとしたレオくんを睨みつけて黙らせた。あたしが答えなきゃいけない。あたしが則夫さんを傷つけたんだから。だけど、なんて答えたらいいんだよ。
「あたしは……」
「レオのほうが気持ちよかったのか?」
[新婚不倫]
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