第5話 ときめきバージンラブ (01)
「わたし……、栄寿さんに……恋……しちゃった……」
うしろから栄寿さんに抱きついて、背中に顔を埋めたままつぶやいた。
胸の奥がきゅんきゅんする。息苦しいほどせつない。
「莉子ちゃん……」
栄寿さんの手がわたしの腕に触れた。
「ぼくは君の叔父さんなんだよ。それに莉子ちゃんはまだ……、大人とは言えないし」
まだ子供だって言いかけたんだろうな。子供扱いしたらわたしが機嫌を損ねると思ったんだろう。そんなことないのに。
くすっと笑ってしまった。自分のことを子供だと認められる程度には、わたしも大人になってるんだって思えた。
「わたしはまだ子供だよ。でも、だから栄寿さんだってわたしとだったらセックスできたじゃない」
「きのう、ぼくは欲望に負けて取り返しのつかないことをしてしまった。莉子ちゃんが帰った後で、ぼくは自分を責めた。莉子ちゃんを傷つけてしまった。責任の取りようもない。あのラブドールを見ただろう。ぼくは病気なんだ」
そんなに苦しそうにしないでよ。あなたの娘がついてるんだから。
そう思って、栄寿さんを抱きしめる腕に力を込めた。
言わなきゃ……。
娘なんだって言わなきゃ……。
でも、打ち明けたらどうなるのかな。きのう、親子かもしれないって可能性を口にしたときは栄寿さんもびっくりしてた。だけど、本気でその可能性を信じてるわけじゃないだろう。
わたしはそのときの栄寿さんの心の隙につけこむ形で初体験をしたけど……。
本当に娘だと知ったらどう思うだろう。もう女として扱ってくれないかもしれない。もうセックスしてくれないかもしれない。そんなの嫌だ。
だけど、言わなきゃ……。
隠してるなんてフェアじゃない。
口を開きかけたわたしは、ふと浮かんだある考えに、急に怖くなって唇を噛んだ。
(もしかしたら、わたしはママ以上に栄寿さんを傷つけてしまうんじゃないのかな……)
早くセックスを経験したい。その一心で栄寿さんを誘惑してセックスした。栄寿さんだって、わたしとセックスできてうれしかったはずだ。セックスは自由で素敵なものだと思う。だけど、みんながママやわたしのような考え方をするわけじゃない。世間一般から見たら、わたしたちはタブーを犯しているんだ。
責任の取りようがないことをしたのは、わたしのほうなのかもしれない。
それでも前に進むしかない。
「きのうのこと、ママに話しました」
栄寿さんの手がピクンと震えた。
「そ、そうか……。ゆうべ、那由多さんから電話があって、ぼくはてっきり那由多さんは激怒しているんだと思った。でも、そんなそぶりはなくて、それどころか、莉子ちゃんをしばらく預かってほしいって話だった。ぼくはなんて言ったらいいかわからなくて、つい了承してしまったんだ」
栄寿さんが喘いだ。
「どうして那由多さんは莉子ちゃんをぼくの元に寄越したんだ」
「栄寿さんこそ、わたしを抱いたことを後悔してるなら、どうしてわたしの滞在を許したんですか」
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