第13話 ハッピーバースデー (08) Fin
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もなかさんがくれたのは、台座の上に筒状のものがついた、ミニチュアの望遠鏡のようなものだった。
「これ、万華鏡ね? それも手作りだわ。すごい」
「わたくしは子供のころから手先が器用だったものですから」
覗いてみると、カラフルな模様がくるくる回る。見方をちょっと変えるだけで世界は変化するんだ。もなかさんのこれからの生活もきっとこんなふうに。
「キラキラしてる」
わたしともなかさんは、ほかの人たちにはわからない意味を込めて微笑みあった。
あずきさんは、白と黒のガーターベルトとストッキングのセットをくれた。
「こういうの身に付けてみたかったんですよ、ありがとう」
「莉子ちゃんにはちょっと色っぽすぎるかなぁ」
「わたし、早く色気のある女になりたいわ。ありがとう、あずきさん」
栄寿さんがくれた箱をあけると、和風のロリータドレスが出てきた。
「うわぁ、かわいい服」
「そのう、実はプレゼントを用意できてなくて、それはあの子たちに着せようと思って注文して作ってもらったものなんだ。サイズは合うと思う」
ラブドールの子たちはわたしより小柄だけど、このデザインなら問題ない。あとで着てみよう。
悠里は、かわいらしいリボンをくれた。ツーサイドアップに髪を結わえるのにちょうどいい。
「誕生日おめでとう、莉子ちゃん」
「ありがとね、悠里。大好きよ」
わたしは弟を抱きしめてキスした。
パパがくれたのは、美術画集のような大判の本だった。
「これって……、わたしのヌード写真集だわ!」
しっかりと製本されていて、紙も上質のものを使っている。これまでパパに撮ってもらった写真を集めたものだ。小学生から中学生にかけて、そして中学の卒業式の日に撮ってもらった写真も。こうして見ると、アイドルみたいにカワイイじゃん。
「ねえ、パパ。あの約束、覚えてる?」
「覚えているよ、莉子」
パパとセックスする約束。いつかわたしがセックスを覚えて、いい女になったら――。
パパはわたしを抱き上げてキスをした。
「いつか、莉子がそうしたくなったときに、な」
「大好きよ、パパ」
ママがくれたのはひとかかえもあるダンボール箱だ。ふたを開けると、中には色とりどりのデザインの小箱がたくさん入っていた。
「これからの莉子にいちばん必要なものを一年分よ」
「コンドームだわ。足りるかしら。ママ、わたしけっこうがんばるつもりよ」
「応援してるわ、莉子。あなたはママの娘だものね」
わたしはママに抱きついてディープキスを交わした。
この別荘で過ごした一週間で、いろいろな経験をした。
わたしは十五歳になった。
ちょっとだけでも大人になれたかな。
きっとなれたはずだ。
そして、来週からはいよいよ高校生になるんだ。
おわり
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