淫獄列車 (7) Fin

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「ちゃんと舌を使って、気持ちよくしろよ」

そんなことを言われても、やり方がわからない。しかたなく、舌先で先端の部分をつつく。恐る恐る、舌を絡めていくと、男のモノは春菜の唾液にまみれた。意識が朦朧となっていく。

背後からまたしても挿入された。ピストン運動が始まる。それにあわせて、前の男が春菜の口の中で、強引に出し入れした。

同時に、お尻にも挿入された。

両手にそれぞれ、肉棒を握らされた。男の手に促されるまま、春菜はそれをしごいた。

全身を無数の手がまさぐり、口とお尻とアソコを同時に犯されながら、自らも男のものを愛撫させられている。それ以外にも、何本もの肉棒が春菜の身体のあちこちに押しつけられていた。

そのうちに、春菜がしごいていたモノが熱いものを放った。精液が乳房を汚した。そして全身に次々と熱いものが浴びせられた。背中や、わき腹や、太ももや、胸に。胎内の奥深くにも。腸の奥にも。射精した男は、次の男と交代し、春菜への陵辱は途切れることなく続いた。

髪の中に何人分も射精された。顔にもかけられた。それが目に入ると、激しくしみた。

春菜を捉えている手は、どろどろに汚れた春菜の身体に、精液を塗りたくった。

とうとう、喉の奥に放出されると、春菜はそれを必死に飲み込んだ。男は大量に放った。ペットボトル一本分はあっただろう。春菜はそれをすべて飲んだ。苦しかったが、飲まなければ殺されるかもしれない。恐怖に怯え、喉を鳴らしながら、飲み干した。

ずるり、と男のモノが口から引き抜かれた。

春菜は放心したまま、身体を起こそうとした。そのとたん、胃の中のものがこみ上げてきた。春菜は反射的に身を屈めると、嘔吐した。飲み込んだばかりの白濁液が、胃液とともに、音をたてて床に飛び散った。うめきながら、何度も吐いた。

(ちくしょう……)

無力だった。情けなくて、悲しくて、春菜は嗚咽を漏らした。

(どうして、わたしがこんな目に遭わなきゃならないんだ! わたしが何をしたっていうんだ! よってたかって女の子を嬲り者にして、それがそんなに楽しいのか! お前たちなんか人間じゃない。ちくしょう、殺してやりたい。みんな死ね。ちくしょう。見てるだけの奴らもだ。ここにいる男は全員死んでしまえ!)

膣の中も、腸の中も、胃の中も、大量の精液を流し込まれ、溢れ出している。全身に浴びせられた白濁液は、冷えて悪臭を放つだけの汚泥になっていた。

列車の床には、剥ぎ取られた春菜の制服と下着が散乱していた。春菜の身体から垂れた精液と、春菜が吐いた精液にまみれ、男たちに踏みつけられて、ぼろぼろだった。その中に春菜の定期入れが落ちているのを見つけた。初めての電車通学が楽しみだった。始まったばかりの高校生活にわくわくしていた。けれど、みんな奪い取られてしまった。

定期入れから定期券が見えていて、そこに春菜の名前が書かれていた。それで春菜は直感した。きっと男たちは春菜のことをけさ初めて知ったのだろう。春菜のポケットから定期入れを抜き取って、それで名前を知ったのだろう。家を知っているから逃げたら押しかけるぞ、というのはただの脅しだったのに違いない。それなのに自分は騙されて言いなりになってしまったのだ。

恐怖と憎悪、悔恨と無力感が、かわるがわる春菜の脳裏に浮かんでは、全身を駆け巡る快感の大波に押し流されていく。

(死にたい……)

たとえ解放されても、自分はもう生きていけないだろう。春菜はぼんやりと思った。いや、こんな目に遭わされたのだ。もう生きてなどいたくない。

列車は動き続けていて、あれから何十分もたっているはずなのに、いつまでたってもどこの駅にも着かず、ラッシュアワーが終わる気配はなかった。男たちは入れ替わり立ち代り春菜を強姦した。果てしなく続く地獄だった。

男たちの慰み者として力で身体を蹂躙されても、心までは明け渡さない。そう思っていた。

でも、もうダメだ。

そうして、ようやく春菜は悟った。男たちの目的は、自分たちの汚らわしい性的欲望を満たすことだけではないのだ。春菜を追い詰めて屈服させることでもないのだ。

男たちは、春菜の心を嬲り殺しにしようとしているのだ。

(もう、ダメだ……)

たまたまそこにいた、ただそれだけのことで、自分は男たちに踏みにじられ、ひとときの愉しみのためにおもちゃにされ、ぼろぼろに壊されて、ゴミのように棄てられるのだ。

何十分か、あるいは何時間かが過ぎていった。もう時間の感覚はなくなっていた。

春菜は気づいていた。苦しみから解放される方法が一つだけあるのだと。そうするしかないのだと。

ついに、春菜はすべてを諦め、自分の無力さを受け入れ、快楽に身を委ねた。

怯えも憎しみも消えていくのがわかった。幸福感さえ感じた。

心が壊れたのだと思った。

突然、春菜は広々とした明るい空間に投げ出された。よろめいて二、三歩進むと、崩れ落ちて突っ伏した。列車の発車ベルがけたたましく響いていた。そこは見慣れた駅のホーム、春菜が降りるはずだった駅のホームだった。ラッシュアワーで混雑していたが、乗降客は倒れている春菜を遠巻きに囲んでいた。その外側には、春菜と同じ高校の制服を着た女生徒が何人もいた。

春菜は倒れたまま動けなかった。快感のスイッチが入ったままで、とめどなく押し寄せる波に、身体をピクピクと痙攣させていた。

春菜を取り囲んでいるのは、全員男だった。彼らは携帯電話を取り出すと、にやにやと笑いながら、全裸の春菜を撮影し始めた。

春菜はかすかに自嘲した。

虚ろな目が光を失い、春菜の心は深い闇の奥へと落ちていった。

おわり

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