リビングのお掃除を終えて三階にあがった。物置兼クローゼットになっている部屋から、ドアを通してかすかに物音が聞こえた。あずきさんも部屋の掃除をしているんだろうと思って、深く考えずにドアを開けた。
「二階は終わりました、あずきさん」
部屋に一歩入ったところで、あずきさんと目が合った。ダブルベッドの上でラブドールにまたがっている。
「り、莉子ちゃんッ」
ふたりとも凍りついた。ブイイインッというバイブレーターの音だけが、部屋に響いてる。
まあ、ノックしなかったのは悪かったと思う。
朝食のあとで、何か家事をお手伝いさせてほしいと頼んだんだ。もなかさんはお父さんと一緒にガレージの二階にある書斎に行ってる。バルコニーに洗濯物を干しに行ったあずきさんはそのまま戻ってこない。それで、掃除が終わったことを伝えに部屋に行ったんだけど……。
まさか、お仕事さぼってオナニーしてるなんて、思いもしなかった。
あずきさんはメイド服の長いスカートをたくしあげていた。レース飾りのついた白のストッキングを、ガーターベルトで吊っているのが見えた。
きょうはわたしもメイド服を着ている。自宅で部屋着として使っている服だ。濃いブルーのミニ丈のワンピースに、白いエプロンとニーソックス。お父さんにもすごくかわいいって言ってもらえた。でも、あずきさんみたいな大人の色気もやっぱり欲しい。
ガーターベルトってあこがれちゃう。あんな下着を付けてみたいな。
――などと言っている場合ではない。
「ごごごごめんなさいッ」
我に返って、部屋を飛び出すと、ドアを閉めた。
(あー、びっくりした。あずきさんのアソコ、見えちゃった)
ほとんど毛の生えてないママやわたしのアソコと違って、あずきさんのアソコは大人っぽい陰毛に覆われていた。手入れとかどうしてるんだろ。
そんなことを考えていると、ドアが開いて、あずきさんが恥ずかしそうに笑いながら顔を出した。
「ごめーん、莉子ちゃん。変なもの見せちゃったね」
「いえ、そんな、すごくきれいでした……、あ、いや、そうじゃなくて……」
慌てて口をつぐむと、あずきさんがいたずらっぽく微笑んで、小さく手招きした。
「ねえねえ、ちょっと見てみる?」
ドキンとした。おととい見たときから、すごく、すごく、興味があったんだ。
見てみたい。触ってみたい。
バイブレーター。
「じゃ、じゃあ、ちょっとだけ」
部屋に入った。カーテンが開けられていて室内は明るい。ダブルベッドの上にロリータ服を着たラブドールが横たえられている。あずきさんはレズビアンだ。お父さんのラブドールをこっそり使ってたりするのかも。
ベッドの上に、さっきあずきさんが使っていたバイブレーターが放置されていた。コンドームが被せられ、ぬるぬるとした液でべっとり濡れている。あずきさんの愛液でこんなになってるのかな。そう思うと、妙に照れてしまう。
あずきさんに促されて、並んでベッドに腰掛けた。
「莉子ちゃんはこういうの、見たことある?」
バイブレーターを手にとってコンドームをはずしながら、あずきさんが訊いた。
「実物は初めて見ました。バイブレーターっていうんですよね」
わくわくする気持ちを隠しきれないのが恥ずかしい。
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