第14話 童貞のススメ (14)

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 女子高生妻の制服エプロン――。大学生のくせにオジサンぽいリクエストだよね。まあ性癖は人それぞれだし、思うところもない。料金分のサービスを精一杯するだけだ。

 朝岡さんのときと同じ場所で待ち合わせ。高梨さんはボーダーシャツに薄手のパーカーという、ほほえましいほどのダサコーデで現れた。一方のあたしはグレーのブレザーと青チェックミニスカに紺ハイソという制服コーデ。これで並んで歩くと妙にリアルな芋カップル感が出てしまいそうだ。

「また高梨さんに会いたかったから、指名してくれてうれしい。制服、こんな感じでよかったかしら。二十四時間ロングなんて、うれしいけど大変だったでしょ? あたしのために無理しないでね」

「あのさ、沙希ちゃん。二十四時間レンタルって、ほかのお客ともしたことあるの?」

 不安そうに尋ねるので、あたしは恥ずかしそうに体をくねらせて、

「た、高梨さんだけです。その……、そもそも二十四時間なんてオプションはなくて……。ただ、あたしが高梨さんともっと長く一緒にいたかったから……。エヘヘ、恥ずい……」

「あはは……、それ聞いて安心した。じゃ、じゃあ、これ……、五十万用意したから」

 と、ビクビクした態度をぎこちない笑顔で誤魔化しながら分厚い封筒を差し出した。

「それじゃ、いまから高梨さんの奥さんになります。その……、だ、大樹さん……」

 恥ずかしくてたまらないといった感じで言うと、高梨さんも照れてしまった。

 部屋に案内してもらう前にスーパーで食材を買っていくことにした。考えてるのはオムライスと唐揚げにお味噌汁。男子が好きそうなもの、かつ、手作り感を出せるメニューだ。お米と炊飯器はあると言われたけど、大学生の一人暮らしだと調味料の用意はないだろうから、チキンライスの素を買っていくことにした。手作りするとケチャップやバターが余ってしまうもの。小麦粉や片栗粉のストックもないだろう。手作り料理イベントで唐揚げは重要だからはずせない。揚げ物用の鍋はないっていうからフライパンでやるか。片栗粉は油の処理にも使えるから、残っても困らないだろう。明日の朝食はパンでオシャレにという手もあるけど、ここは和食で家庭的な女をアピールする。

 高梨さんとレジに並んでいると、朝岡さんからのメッセージが届いた。

『大丈夫? 高梨と一緒にいたりしないよね?』

 あたしはちょっと考えてから、高梨さんに見られないよう返信した。

『ごめんなさい。キャンセルも延期も言い出せなかった。いま一緒にいる。どうしよう』

 クククッ、『どうしよう』じゃねーずら。NTRピーンチ。どーする朝岡さん。

 とまあ、こんな感じで余裕かましてたあたしなのだが……。

 このあと、大きな落とし穴が待ち受けていた。

 スーパーを出たあと、高梨さんの部屋に向かったのだけど、つい最近見た景色がつづくのでだんだんと焦りを感じ始めた。連れて行かれたのは賃貸の低層マンション。朝岡さんが住んでいるのと同じ建物だった。こんなところで朝岡さんにバッタリ会ってしまったら大変だ。高梨さんの後ろにコソコソ隠れるようにしてエレベーターに乗った。悪いことに、降りたフロアが朝岡さんの部屋がある階だった。地方の同じ高校の友人同士だから、同じマンションに部屋を借りていたとしても、まあおかしくはない。だがしかし――。

「ここがぼくの部屋だよ。さ、どうぞ入って」

 高梨さんが開けたドアは、朝岡さんの部屋だった。

(うわぁ、なんてことだ)

 ルームシェアしてたのか!

 2LDKだから一部屋ずつ使ってるんだ。おととい入った部屋をのぞいてみた。朝岡さんとセックスしたベッドがそこにあった。朝岡さんはいない。いたら高梨さんがあたしを部屋にあげるわけもないけど。

「あ、沙希ちゃん。そっちは友達の部屋なんだ」

「それって朝岡さんのことですよね? きょう朝岡さんは……?」

「知ってたんだね。安心して。朝岡は今朝から館山でリゾバ。月曜まで帰ってこないよ」

 リゾバって何だ? 大学生用語か? 月曜まで帰らないって言うけど、いま高梨さんとデート中だってさっき伝えちゃったんだよ。

 とりあえず、買ってきた食材を冷蔵庫に仕舞いながら作戦を考える。すると、高梨さんが背後から腰を抱いてきた。

「た、高梨さん……。あたし、レンタル彼女だから、あの、そうゆうことは……」

「ただのレンタル彼女ならここまでのサービスはしないでしょ? 確かに最初は沙希ちゃんを恋人役にして昔の彼女を見返したいと思った。でも最初のデートでわかったんだ。過去にとらわれるなんてくだらないって。それよりも沙希ちゃんの気持ちに応えたい。ここまでぼくを想ってくれるきみの気持ちに、ちゃんと向き合わなきゃって、気づいたんだ」

 こいつ! なにキモいこと言ってんだッ。って、言わせてんのあたしだけど。

「安心して。ぼくも沙希ちゃんのことが好きなんだ。だから、もうほかの男とデートしないでよ。お金が必要なら、ぼくが何回でもレンタルするから。それで高校を卒業したら、新しいマンションを探して二人でいっしょに暮らそう」

 ひえー、思ってたよりアブナイ人だったぁ。でも、誘拐強姦魔にくらべたら大したことない。これはもうここで行くしかないな。あたしは振り向いて高梨さんにしがみついた。

「抱いて、大樹さん。あなたの色に染まりたい。めちゃくちゃになるまで抱いて」

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