人妻セーラー服(02)

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 くるみは亮さんのパジャマを顔に当てて、亮さんの匂いを胸いっぱいに吸い込んだ。

(ふにゅう……、亮さん……、好き……)

 自然に右手がミニスカートの中に伸びていく。

 太ももの内側をそっと撫でてみる。

「ああん、ダメですよ、亮さん……。そんなところ触っちゃ……」

 妄想の中の亮さんが太ももを愛撫しつづける。やがて、その手がパンツのラインに沿ってお尻へと移動していく。

 スカートをめくられて、パンツの上からお尻を揉みまわすように――。

 くるみの手が止まった。三枚で1290円で売られていたベージュのショーツガードルを穿いていたことを思い出したせいだ。

(これ、ぜんぜんカワイクないやつだ)

 くるみは目を閉じて、あらためて妄想の再構築を試みた。

 あたしはなめらかサテンのちょっとセクシーなかわいいパンツを穿いてる……。

 かわいいパンツ……。

 ……亮さんがくるみのお尻を撫でまわしてくる。

「ダメですってば、亮さんたらぁ。もお……」

 亮さんの手がパンツの中に入ってきて、くるみのやわらかなお尻をギュッとつかむ。

「ああん、いやん、亮さんのエッチぃ……」

 くるみは左手で亮さんのまくらをギュウッと抱きしめて、自分の胸に押し付けた。

 右手がお尻から股間に移って、パンツごしにアソコに触れた。

 亮さんの指が(ほんとはくるみの指だけど)アソコを前後になぞるように指でこする。

 すこしずつ気持ちよくなってくる。

 呼吸が荒くなってきた。鼓動が速い。

「亮さぁん……、くるみのこと好きですかぁ? くるみは亮さんのこと、大好きですぅ」

 ほとんど無意識のうちに、右手をパンツの中に入れた。

 ちょっと濡れてる。

 クリトリスに触れ、ツンツンと軽く弾いてみる。

 それから指の腹でそっとこする。

「んふぅ……ん……」

 くるみは抱きしめていた亮さんのまくらを離して、セーラー服の中に左手を入れた。

 ブラジャーの上から乳房を二三度揉むと、すぐにその鬱陶しい布を上にずらして、直に乳首に触れた。

「亮さん……、亮さん……、ん……、ああん……」

 顔を覆う亮さんのパジャマ。その中にくるみの熱い吐息があふれて、亮さんの匂いと混じり合う。

 興奮と快感が高まっていく。

 セーラー服を着て、夫のパジャマの匂いを嗅ぎながらオナニーにふける、というのはちょっと滑稽な図ではあるけれど、新婚の主婦なら誰でも似たようなことをしたことがあるはず。え? ない? いや、あるでしょ、このくらい。

 次第に昇りつめていくくるみ。

 ところが、あとすこしで達する、というとき不意に、

(『なあ、前川……』)

 という声がして、急ブレーキがかかった。

 くるみは目を開けて、亮さんのパジャマを顔の上からどけた。その顔は呆然として青ざめていた。

「なんで……?」

 高まっていた気持ちが行き場をなくして空中分解してしまった。

(渡辺せんぱい……。なんで今ごろ思い出しちゃうの……?)

 もちろんそれは久しぶりに高校時代の制服を着てみたから。それ以外にない。くるみだってそれくらいすぐに分かった。

 渡辺陽司先輩。くるみが高校生のときに付き合っていた彼氏。天文部の一年先輩で、くるみが二年生のときに告白した相手だ。先輩は卒業後に遠くの大学に進学した。会えない日々が続いたけれど、耐えるしかなかった。やがて、くるみは地元の大学に進み、遠距離恋愛が続くことになった。そんなある日――。

『なあ、前川……』

 前川というのはくるみの旧姓だ。このセリフはこう続く。

『俺たち、もう終わりにしよう』

 向こうの大学で好きな子ができたんだ――。そう先輩は言った。『ほかに好きな子ができた』というセリフは『もう新しい彼女と付き合ってる』という意味だと、当時のくるみは知らなかった。そのことで大喧嘩になり、かなり揉めた。だからといって元サヤなんてことにはならず、何日も泣き腫らしたあとで、くるみが諦めるほかなかった。

 告白したとき、このセーラー服を着ていたのだ。このセーラー服はつらい思い出と繋がっている。思い出してしまうと息ができなくなるほど胸が苦しくなって、涙が――。

「だぁぁぁぁっ!! なにやってんだ、あたし」

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