第9話 とまどいロータープレイ (03)
さっきの女の子だって高校生っぽかったのに、どこかへ消えてしまった。
しばらく店の前で待っていると、あずきさんが出てきた。笑いながら、わたしの肩を抱きよせて、
「大丈夫だった? まあ、見つかっちゃったらしかたないね。だけど、首尾はこのとおりバッチリよ」
お店のロゴが入った白いビニールの手提げ袋を持っている。いろいろ買い込んだようだ。あずきさんはバッグから買い物袋を取り出して広げると、お店の袋を中に入れた。アダルトショップの袋を持ち歩くのは恥ずかしいもんね。あずきさんは最初からわかっていて用意してたんだな。
「栄寿さんたちの買い物が済むまで、どこかでお茶にしようか。莉子ちゃんも早く見てみたいでしょ」
あずきさんが買い物袋を持ち上げて言った。
わたしはお店のほうを振り返った。あの子の姿はない。まだ店の中なのかな。
誰だったんだろう。お父さんのことを知っていた。きっと、以前お父さんが付き合ってた子のひとりに違いない。
美人だったな。デンジャラスなクールビューティって感じ。お父さんの付き合ってた子って、みんなあんなにきれいな子なんだろうか。
あの子はお父さんとセックスしてたんだ。
別に嫉妬は感じない。お父さんとわたしは特別な関係だもん。むしろ、あの子とお父さんがどんなセックスをしてたのか興味がある。
でも、思い出すだけでむかつく子だったな。あんな子がほんとにお父さんの彼女だったのかしら。
さて、次にあずきさんに連れて行かれたのはメイド喫茶だった。メイド喫茶に入るのは初めてだったので、
「お帰りなさいませ、お嬢さま」
と、言われるのかとわくわくしたけど、入ってみると普通に、
「いらっしゃいませ」
と言われた。住み込みメイドのあずきさんがメイド喫茶のメイドさんに『お嬢さま』と呼ばれるところを見てみたかったんだけどな。
わたしたちはメイドさんに窓際のテーブル席に案内された。
席につくと、あずきさんが買い物袋の中身をテーブルの上にならべようとした。あわててそれを制する。店内に背を向ける席にいたわたしは、背中ごしにほかのお客さんやメイドさんたちに見られなかったか確認した。
「冗談だよ、莉子ちゃん」
そう言って、こんどは目立たないようにひとつずつ戦利品を取り出して見せてくれた。
まずはバイブレーター。きのう使ってみたのと同じように、パールリングやクリトリス用のローターがついている。
「これはスイングが強力なんだって。振動モードも多彩で、クリトリスに吸いつくような感じがたまらない、ってネットで高評価だったんだよ」
あずきさんはバイブレーターを袋に戻し、別の箱を取り出した。透明なケースの中に、カラフルな色のついた棒状のものが三本はいっている。ボールをいくつも連ねたような形になっていて、ディルドよりはかなり細い。
「これはねえ、アナルスティック。はじめは細いのを使って、徐々に慣らしていくんだ。アナルってわかる?」
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