新婚不倫 (10)

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「則夫さんは、そんなに嫉妬深いひとなんですか?」

「え?」

「やきもち焼きだと言ったでしょう?」

「ああ、うん」

レオくんはよほどあたしの夫のことが気になるんだろうね。不倫妻に夫のことを思い出させてどうするの、と思ったけど、レオくんのそんなところもかわいい。たぶん、夫が嫉妬深いと聞いて、少し心配になっちゃったんだろうな。

「則夫さんはあたしがほかの男のひとと話をするのも嫌がるのよ。結婚したら仕事をやめてほしいって言われたし」

「職場に男性がいるから?」

あたしはくすくす笑って、上目遣いにレオくんを見た。

「メイドカフェで働いていたの」

レオくんがちょっと意外だという表情を見せた。

「メイドさんって、別に変なお仕事じゃないよ。レオくん、いま、あたしのことフーゾクで働いてたのかって思わなかった? そーゆう仕事じゃないんだからね」

あたしが非難するとレオくんは済まなそうに、

「わかってますよ。ただ、奥さんはもっと、なんていうか文化系の仕事をしていると思ってたんです。ぼくたちが出会ったのは映画館や図書館だったでしょう。それに奥さんはとても知的な女性だから。でも、確かに奥さんのルックスやプロポーションなら、メイド姿も似合いそうですね」

「うふふ、実はいまでもときどき家でメイド服を着てるんだよ」

「そうなんだ。見てみたいな、奥さんのメイド姿」

「それはダーメ。あたしのメイド姿を見ていいのは、もう則夫さんだけだもん」

あたしはいじわるく笑った。ほんとはメイド服を着たところをほかの男性に見られてもどうということはない。ただ、夫にだけ見せてレオくんには見せない、そういうものを残しておくことも大切な気がしたんだ。

「それは残念だな」

レオくんはそう言ったけど、本心はそれほど興味ないのか、別に残念そうには見えなかった。

「でも、コスプレしてセックスしてるとか?」

「な、なんでわかったの!?」

思わず上ずった声をあげて、しまったと思った。他人に打ち明けるような話じゃないもんね。則夫さんはあたしがメイド服を着ていると興奮するらしいんだ。則夫さんの前でメイド服を着るのは、あたしにとって『えっちしたい』というサインだった。

「あ、じゃあ、もしかして奥さんがご主人と出会ったのはお店でですか? 奥さんが則夫さんと初めて会ったときのことを聞きたいな」

「うーん」

あたしは口ごもった。どうしてレオくんは夫のことばかり訊くのかな。不倫相手の男のひとの腕に抱かれながら夫の話をするのは胸が痛いよ。卑猥な言葉をむりやり言わされるより、ずっと堪える。もしかして、これって羞恥プレイ?

レオくんがあたしの首筋にキスしながら、クリトリスを指でつついた。早く話せと催促しているんだ。

「出会ったのは半年前のことよ。常連のご主人さまに連れられてお店に則夫さんが来たの。則夫さんはメイドカフェに来るのは初めてだったのね。勝手がわからずにちょっと戸惑ってたわ」

背後からレオくんの愛撫を受けて、あたしは途切れ途切れに話した。

「それから何度もお店に来てくれるようになって……。それで、お店の外で会って欲しいって言われたの。あたしも前からステキなひとだなって思ってたから、デートすることにしたわ。一目惚れだった、って告白された」

あたしは告白されたときのことを思い出した。胸の奥がズキリと痛んだ。

「告白されたときは、すごくうれしかった。それからデートを重ねて……」

あたしが言葉を切ると、レオくんが、

「そして初めてのセックス?」

「レオくんのいじわる」

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