異次元を覗くエステ (21)
美緒は驚いたのかすこし抵抗する素振りを見せたが、すぐに体の力が抜けて、彩香にされるがままになった。
舌を入れて美緒の舌を求めた。
美緒の舌が応えてくる。
抱きしめると美緒の豊かでやわらかい乳房が彩香の乳房を押し返す。
ぴったりくっつきたいのに、ひとつになりきれないもどかしさ。
せめてお腹とお腹をくっつけて脚をからめた。
イチゴジャムと練乳まみれなのでヌルヌルするが、それすら気持ちいい。
体の奥からポカポカする。
愛しい気持ちがあふれてくる。
本当に好きな人となら、キスでこんなに幸福な気持ちになれるんだ。
彩香はゆっくりと唇を離した。うっとりと美緒を見つめた。美緒が顔を赤らめ、それから弱々しく微笑んだ。
彩香はおでこをくっつけると、
「もっと早くこうしていればよかった」
と、ささやいた。
恋愛もセックスも男とするものだ、同性愛なんて間違っている――、そんなつまらない固定観念にとらわれて、本当に大切なものを見ようとしなかった。世間の常識に凝り固まって、好きな人を愛する気持ちを拒絶していた。
なんてバカだったんだ。
最上級のしあわせが目の前にずっとあったのに。
「ゴメンね、美緒。あたしは自分の気持ちを認めるのが怖かったんだと思う。けれど、やっとわかった。愛してる」
美緒が目を見開いた。その目から涙がぽろぽろこぼれた。
「わたしも。愛してるわ、彩香」
ほっぺたをぷるぷる震わせながらそう言うと、美緒は恥ずかしそうに笑って、
「あらあら、涙が止まらないわ。すごくうれしい。いままで生きてきたなかで、いまがいちばんしあわせよ」
「あたしもだ。生きているうちに伝えられてよかった」
彩香と美緒は立ち上がって抱き合うと、まわりを取り囲むスライムの壁を見た。もう手が届くほど近くまで迫っていた。
キスをした。
死ぬのは怖くない。
本当に愛せる人に出会えないまま年老いていくのに比べたら。
足元にスライムがからみついた。
すぐに、ふくらはぎから太ももにかけてスライムにおおわれる。
彩香は美緒を抱きしめる腕に力をこめた。美緒も抱きしめ返す。
もう離さない。
たちまち全身が飲み込まれた。
けれど唇は離さない。
全身の肌がブクブクと泡立つのを感じた。
蒸しタオルでくるまれたように熱く、チクチクする。
すこしずつ溶かされていく。
目はギュッと閉じた。
体が浮き上がる。
ふたりはキスをして抱き合ったまま、ゆっくりと回り出す。
スライムはふたりの体の間に割り込んで引き離そうとした。
けれど、彩香も美緒も決して離れようとはしなかった。
スライムは唇の隙間をこじあけて口の中に入ってきた。
お尻の穴から熱いスライムが体内に入ってきた。
アソコからもスライムが入ってきた。
それでも彩香と美緒はお互いに離れることなく、高く上っていく。
そしてふたりはふたたびオーガズムにつつまれた。
オーガズムが『小さな死』だというのなら――
死ぬことはこれ以上ないくらいに最高のオーガズムなのにちがいない。
恐怖も不安もない。
ただ幸福だった。
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