「いいのか? レイプのことが公になれば、今後の学校生活がつらいものになるぞ」
下田先生はぜんぶうまく行くことを確信してるみたいに勝ち誇った顔だ。
あたしは先生の手を振り払って、出入り口へと走った。でもすぐに追いつかれてしまった。悲鳴をあげる間もなく背後から手で口を塞がれた。先生はあたしを片手で持ち上げると、脚をばたつかせるあたしをものともせず、悠々と倉庫へと歩いていった。
「気持ちよくしてやるから心配するな。記念のハメ撮り動画もキレイに撮ってやる」
下田先生はあたしを倉庫に放り込んだ。そして自分も中に入ると戸を閉めた。
使われていない倉庫の中はガランとして何もない。照明はなくコンクリートの壁に小さな明り取りの窓があるだけだ。薄暗くて、埃っぽい臭いがした。
こいつが入学当初からあたしを見て卑猥な妄想に浸っていることはわかっていたけど、まさか行動に移すとは思っていなかった。
ついこの間までは――。
くそっ、予想できたことだったのに。
藤堂先生にレイプ勝負を持ちかけたあのとき以来、下田先生はあたしを物陰から見張って、いつどこであたしを強姦するか、チャンスを狙っていたんだ。吐き気がする。
まったく気づかなかった。
藤堂先生のことで頭がいっぱいで、ほかのことに気が回っていなかった。
常に神経を尖らせて、周囲に気を配れ。そう思っていたのに。
「女子生徒を強姦なんかして、ただで済むと思ってるんですか」
平常心になろうとしたけど、口の中がカラカラだ。
「抵抗しなけりゃ乱暴なことはしない。気持ちよくしてやるから安心しろ。美星も男にヤられるのは初めてじゃないんだろ? こうなったら諦めて一緒に楽しもうや」
「あ、あたしは男の人の経験なんてないです。だから許してください。先生は勘違いしてます。このことは誰にも言わないから、あたしを解放してください」
バージンだと言い張ったら躊躇してくれるかと思ったけど、そうはならなかった。
「処女ならそれでもいいさ。どっちにしてもお前は泣き寝入りするしかないんだからな。俺にレイプされたと訴えてもいいぞ。レイプ動画をバラ撒かれてもいいならな」
ダメだ。こいつは興奮して完全にタガが外れてる。
でも、こんな狭い密室の中じゃ逃げる場所もない。
下田先生が襲いかかってきた。
「やだ、やめてッ」
床に押し倒された。押しのけようとしても女の子の力じゃどうにもならない。
ミニスカートとペチコートを脱がされ、下半身をあらわにされた。
ブラウスのボタンを引きちぎられて、胸をはだけられた。
「ふはははっ、毎週出会い系で釣ってる女とちがって、本物のJKの肌ざわりは最高だな。俺は初めて見たときから美星とヤりたいと思っていたんだ。本当にお前は可愛いぞ」
「やめてったらッ。こんなのヤダッ。助けて! 誰かぁ!」
「助けなんて誰も来ないんだよ。それはいつもぼっち飯のお前がいちばんよく分かってるだろうが」
そのとおりだ。いまの時期、屋上には誰も来ないからあたしはいつも屋上に来るんだ。
だけど――。
「助けてぇぇ! 助けて! 先生! 藤堂せんせーッ!」
声の限りに叫んだ。
その瞬間、倉庫の戸が勢いよく開けられた。明るい陽の光が差し込んだ。
藤堂先生! ほんとに来てくれた!
先生はあたしが半裸に剥かれて下田先生に組み敷かれているのを見るや、倉庫に飛び込んできた。驚いて声も出せずにいる下田先生に掴みかかって、ためらうことなく思いっきり顔を殴った。吹っ飛ぶ下田先生を引き戻して、もう一発殴った。
「この野郎! 美星はヤらせないと言っただろうが! 美星、無事か?」
「はい、藤堂先生!」
涙が出てきた。藤堂先生と心が通じ合ったような気がしたから。
藤堂先生はあたしを励ますようにニッと笑った。先生が見せた中じゃ一番の笑顔だ。
だけど、その隙を下田先生は逃さなかった。藤堂先生の手を引き剥がすと、脛を蹴り、つづけて股間を蹴り上げ、とどめにみぞおちに貫手を見舞った。藤堂先生はお腹を押さえてコンクリートの床に崩れ落ちた。体を折り曲げてうめき声をあげた。
「藤堂先生、あなたは本当にウザい人ですね。どうやら、先生には消えてもらうしかないようです。そのあとでゆっくり美星をいただきますよ」
下田先生は戸口に立って、心底うんざりしたという顔であたしたちを見下ろした。その手にはあたしのスカートとペチコート、それにあたしと先生のスマホが握られていた。
「藤堂先生は美星をレイプしている現場が見つかって、懲戒免職になるんです」
「あんたなんかの言うことは誰も信じない。被害者であるあたしが藤堂先生に襲われたなんて言うと思ってるの?」
「美星が何を言おうと関係ないぞ。誰がどう見てもこれはレイプの現行犯だ」
そう言うと、下田先生は倉庫を出て外から戸を閉めた。
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