ゆっくりとファスナーが下ろされていく。
恭介が舌で詩織の口内を愛撫する。詩織も舌を動かして応えた。混じり合ったふたりの唾液が口の端からこぼれそうだ。なんだかすごくいやらしい気分になった。
不意に乳房が自由になったのを感じた。
いつの間にか上半身は裸にされていた。
キスに夢中で気づかなかった。
脱がせやすいように腰を浮かせた。恭介がワンピースを両手でていねいに、詩織のお尻から抜き取った。詩織は足を使ってワンピースを脱いでしまうと、床に蹴った。
恭介が唇を離したので詩織は目を開けた。恭介はもう全裸になっていた。詩織はあわてて目を閉じた。
一瞬だったけど、見えてしまった。恭介のアレは勃起して上を向いていた。
ふたたび抱きしめられた。
恭介の肌はちょっと冷たかった。でも、抱きしめられているうちに、だんだんと暖かくなってきた。
またキスされながら詩織は体を押された。抵抗することなく、ゆっくりと体をうしろに倒す。恭介がキスをしたまま詩織の肩をささえてくれた。掛け布団をはぎ取る音が聞こえた。ふたりは体勢を変えながら、折り重なるように体を横たえていく。
とうとうベッドのやわらかい感触を背中に感じた。
恭介は詩織に体を重ね、キスをつづけた。
体が密着している。体重をかけないようにしてくれているけど、胸が圧迫されていた。男の子には誰一人触れさせたことのない乳房が、もうじき恭介の手で蹂躙されるのだ。
急に不安になってきた。
着痩せするタイプだが、詩織はDカップだ。お尻もけっこう大きい。
恭ちゃんはあたしの体を気に入ってくれるだろうか。
そんな気持ちがむくむくと湧き上がってきたのだ。いままでそんなことを思ったことはない。しかし――。
恭介はこれまで三人の女子とセックスをした経験がある。みんな美人でスタイルもよく、何度か話をした感じでは性格もいい子ばかりだった。セックスするときはどうだったんだろう。どんなセックスだったにせよ――。
ぜったい比べられる!
恭介が過去に抱いた女を比較するような男だと言っているのではない。でも、男子は昔の女のことを忘れないものだという話を聞いたことがある。たとえ無意識のうちにであっても、詩織の体を、去年まで付き合っていた先輩や、その前に付き合っていた女子大生や、最初に付き合ってた女子校の子と、比べずにはいられないはずなのだ。
詩織は自分をほかの女子と比べたことなんてない。男子からどう思われているかも気にしたことはない。告白されたことが何度かあったが、詩織が欲しいのは恭介の心だけだった。幼なじみという、近づくことも離れることもできない特殊な立場である以上、ほかの誰かと比べても意味がないのだ。
恋人として抱かれようとしているいま、詩織は初めて自分がほかの女子と比べてどうなのかが気になりだした。
大切なのは中身だ。
誰よりも恭介のことを想っている。
誰よりも恭介と通じ合っている。
そのことに疑問はない。でも、問題は中身なのだ。中身――つまり、体だ。
セックスで恭介を気持ちよくしてあげられるだろうか。
さっき見たエロ本の中身が思い出された。モデルの女性が男の人のアレを咥えている写真だ。恭介はああいうことを望んでいるのだろうか。
もし恭介がアレを咥えてほしいと頼んできたらどうしよう。
勃起したアレなんて見るのも初めてなのに。
できるだろうか。
「何を考えてるの、しーちゃん?」
「え?」
「怖い?」
詩織は顔を真っ赤にして目をそらした。
「あ、あたし……、どーゆーふうにすればいいのか、よくわからないから。その……、は、初めてだし」
「心配しないで。俺がリードするから」
「あの本に載ってるようなこと、す、するの?」
「あの本?」
詩織が視線を戻して恭介の目を見た。恭介は詩織が何を考えているのか察したらしく、顔をほころばせた。
「しないよ。すくなくともきょうのところはね。俺はしーちゃんのこと、世界でいちばん大切に思ってる。だから俺を信じて」
そう言って、恭介は詩織に軽くキスした。
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