左右の髪を一房ずつ白のリボンで結わえ、もう一度、姿見の前でポーズを取った。そして鏡の中の自分に右手を伸ばし、
「わたし、柊莉子(ひいらぎりこ)、十五歳の女子高生! ねえ、あなた、わたしとセックスしようよ」
言ってから、あまりの恥ずかしさにその場にうずくまってしまった。でも、顔はにやけてしまう。
ああ、早く誰かとセックスしたい。
高校生になったら、まず初体験を済ませて、それから何人かのセックスフレンドを作ろう。
問題は最初の相手を誰にするかだ。一生に一度のことだもん。誰でもいいってわけにはいかない。
それにいろんな人とセックスしたいけど、誰とでもセックスする女になるつもりはない。自分を粗末に扱うつもりはないんだ。
わたしが初めてのセックスの相手として考えている候補はふたりいる。どちらも大好きで、これ以上ないくらい信頼できる人だ。
だけど、障害もある。
わたしは立ち上がって、部屋を飛び出すと、隣の部屋のドアをノックした。ドアを開けると、弟の悠里(ゆうり)が床に腹ばいになって本を読んでいた。
「悠里、見て見て! お姉ちゃんの制服姿、似合う?」
体を起こした悠里の前で、わたしはつま先でくるりっと一回転してみせた。悠里からはわたしのパンツも見えたはず。
「すごくかわいいよ、莉子ちゃん。なんだか色っぽく見えるね。そのスカート、すこし短いんじゃないの?」
小学生のくせに、ませたことをおっしゃる。悠里は頭がいい。学校の成績もいいんだけど、そういう意味じゃなくて、洞察力が大人びている。だから、わたしのいちばん言ってほしいことを言うんだ。色っぽいって言葉の意味、わかってんのかな。
そこでわたしはわざと恥ずかしそうにスカートを押さえ、
「もうっ、悠里ってば、いまわたしのパンツ見たでしょ!」
「みみみ見てないよッ」
とたんに悠里は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。大人っぽく見えてもまだまだ子供だ。こういう手にはすぐ引っかかる。
悠里は白のピンタックブラウス、濃いグレーのショートパンツに黒タイツ姿だった。耳が隠れるくらいの長さのさらさらした髪と相まって中性的な雰囲気を醸し出している。わたしと同じで母親似だ。
わたしは悠里の横に座りこんで、十歳の弟をぎゅうっと抱きしめた。
「かわいいなぁ、悠里はァ。姉弟なんだから、パンツくらい見てもいいんだよ」
頬ずりすると、悠里のほっぺたはちょっと火照っていた。
「あぅ、莉子ちゃん、ちょっと……」
照れた悠里が逃れようと体をよじった。でも放さない。
「悠里ったら、恥ずかしがることないのに。お姉ちゃんのこと嫌いになっちゃった? 最近はお風呂にも一緒に入ってくれないよね」
「ぼくだってもう五年生になるんだよ。莉子ちゃんだって高校生になるんじゃないか。いくら姉さんだからって、男と女なんだよ」
「あはーん、こいつぅ、もしかしてお姉ちゃんを女として意識しちゃってるのカナ?」
「そそそそんなんじゃないって!」
くぅ、かわいいよぅ。性の目覚めだね。お姉ちゃんは気づいてるんだゾ。
だけど、やっぱり悠里とじゃ初体験はムリっぽい。まだ十歳だし。それに父親は違うけど、家族だもんね。悠里は姉であるわたしとのセックスに抵抗があるかもしれない。
わたしは悠里とだったら、してもいいんだけどな。ただし、もう少し大きくなってからネ。
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