第14話 童貞のススメ (10)

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 電車に乗った後、きょう一日の戦果を振り返ってみた。

 あの二人を落としたという手応えはある。メールしてくるかな。それだけの勇気と積極性を出してくれるかどうか。でも、これだけのチャンスをつかもうとしない男ならそれまでのことだ。

 朝岡さんは単に奥手なだけで、普通の男の人だった。経験さえ積めば彼女だって作れるようになるだろう。さっきのボートで筋肉痛になるだろうから、その痛みを感じるたびにあたしのことを思い出すに違いない。あの人の恋の練習台になってあげたいと思う。初体験の相手として朝岡さんの思い出になりたい。

 高梨さんはちょっと思い込みが激しい人だった。自分になびかなかった女に思い知らせたいという気持ちはわからないではないけど、愚かで無意味な考えだ。あたしと初体験したら目が覚めるんだろうか。この手の男の人の心のモヤモヤというのは、セックスを経験すればだいたい解消されるものだと思うけど。

 お金を用意できるかどうかはわからない。二人とも真面目な善人ではあると思えたから、料金を踏み倒したり、あたしをレイプしたりはしないだろう。襲いかかってくることはあるかもしれないけど、最後まで致すことはできないタイプだ。それがわかる程度にあたしは男性経験がある。

 朝岡さんと高梨さんはお互いのデートの内容を打ち明け合ったりするかな。坂下さんに改めて話を聞きに行くかもしれない。二人があたしとデートしたことを知れば、坂下さんはあたしとセックスしたことを打ち明けてしまう可能性もある。いろんな要素が絡み合っていて、どうなるかは予測が難しい。恋愛ゲームの醍醐味だ。

 これからどうなるか。それはメールが来るかどうか、来るならいつ来るかで決まる。

 タイムリミットは今月いっぱいだ。

 で、そのメールは意外に早く来た。

 月曜の夜、高梨さんから二十四時間レンタルの申込みがあったのだ。地方から上京してきて仕送りも受けてると言ってたから、そんなにお金に余裕がある生活じゃないはずだけどな。実家が裕福だというわけでもないらしいし。

 水木金と中間テストがある。日曜はリピーターの人の予約が入ってる。金曜の午後から土曜日にかけてなら大丈夫だ。

「金曜日の午後三時から土曜日の同じ時間までならどうですか? 料金は全額前払い、デート代は男性持ちですけど」

 と、メールを返してみた。返信はすぐに来た。

「沙希ちゃんのためにカードローン申し込んだ。五十万円で足りるかな?」

 カードローン? 大学生でも消費者金融でお金を借りれるのか?

 ネットで調べてみると、どうやら大学生でもけっこうな金額を融通してもらえるらしい。アルバイトをしていて多少とも収入があれば、割と審査が通るようだ。大学生の一ヶ月のバイト収入についても検索してみた。平均三万円くらいだという。金額の分布も調べると、二万から四万が半分くらい、それより上と下が四分の一ずつといった感じだ。高梨さんは高額バイトしてるようなタイプには見えない。高収入ならローンに頼らなくてもいいだろうしな。二十四時間レンタルなら料金は三十六万円になる。平均的な大学生の一年分のバイト代だ。高梨さんのバイト収入がそれくらいだとすると、カードローンで借りれる限度額は十二万円。申し込んですぐ限度いっぱいは貸してもらえないだろうから、せいぜい五万くらいだろう。まさか闇金じゃないだろうな。

 うーむ。あまり搾り取るのも考えものだな。パンクして首が回らなくなった挙げ句、犯罪でも起こされたんじゃかなわない。

 となると、高梨さんとはこれで打ち止めってことになりそうだ。でも、それだけ払ってもらえるなら、サービスはしっかりしてあげよう。夜三回、朝二回くらいかな。ゴムはどうしようか。童貞の人とは基本ノースキンだけど……。

 そんなことを思案していると、高梨さんから追加のメールが来た。

「女子高生の奥さんとの新婚生活という設定にしたいんだけど、そういうオプションはある?」

 むふぅ、一般のレンタル彼女ってこういう設定ありなのかな。援交ではぜんぜんありだけどね。ママになって欲しいってリクエストもたまにあるし。

「プラス八万円で夜ごはんと朝食を制服エプロンで手作りしちゃいますよ」

 これで話がついた。お部屋デートだ。

 セックスする約束はしてないけど、高梨さんもそのつもりのはずだ。もしも勇気が出ないようなら、こちらから誘ってあげないといけないな。

 朝岡さんはどうだろう。と思っていたら、火曜日にメールが来た。

「明日か明後日に会いたい。延長もしたい」

 という内容だ。コレはアレだな。高梨さんがあたしとデートする約束を取り付けたことを知って、その前にデートしたいということだな。先を越されるのはイヤなんだろう。セックスできるかもと思っているならなおさらだ。

 水曜の午後を指定した。学校があるから泊まりというわけにはいかない。高梨さんより先にあたしと初体験できるかどうかは朝岡さんの頑張り次第だ。

 というわけで、第二ラウンドスタート!

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