「後でちゃんと話すつもりだったんですけど」
わたしは笑顔に戻って、
「栄寿さんがわたしの実の父親なんです。きのう、ひょっとしたら親子なのかも、って言ったじゃないですか。それでママに確かめたんです。そうしたら……」
お父さんの顔がみるみる青ざめていくのがわかった。
「わたしの父親は夏目おじさんじゃなくて、本当は栄寿さんなんだって」
「そんなバカな。いや、だって……、でも、それじゃどうして兄さんは莉子ちゃんを自分の娘だなんて……。那由多さんだって、そんなこと一言も……」
声がうわずってる。
「栄寿さんはその頃まだ小学生だったから。きちんと受け止めることができないんじゃないかって心配だったそうです。それで、栄寿さんが大人になるまで知らせないことにしたんですよ」
「そんな……。信じられない……」
無理もないけど。
わたしは腕を伸ばして手探りでポシェットを探した。脱がされた服と一緒にベッドの上にあった。ポシェットからケータイを取り出す。きょうはママはお仕事がお休みだ。ママのケータイにかける。
ママはすぐに電話に出てくれた。
「もしもし、ママ? 莉子だよ。いま話せるかな?」
『いいわよ、莉子。どうしたの?』
「栄寿さんと一緒にいるんだけど。たったいま、栄寿さんに話した。わたしが栄寿さんの実の娘だって」
すこし間があいたあと、ママは変わらない口調で、
『そう』
「栄寿さんに替わるね」
わたしはケータイをお父さんに渡した。お父さんは恐る恐る受け取ると、ケータイを耳に当てた。
「もしもし……、那由多さん。夏目栄寿です」
息子に対するような優しいママの息遣いが、電話を通して感じられた。
『ショックだったよね。いままで黙っててゴメン』
「莉子ちゃんは本当にぼくとあなたの娘なんですか? だって、兄さんとだって関係を持ってたわけだし」
『久遠ちゃんとするときはいつも避妊してたもの。栄寿さんとはナマだったから。それに妊娠した時期はわかるから、父親はあなたで間違いないわ』
お父さんは言葉が出てこない様子で、視線も定まらない。でも、わたしの中にいる部分は、むくむくと大きくなった。わたしが娘だということを受け入れたんだ。だから、興奮しちゃったんだ。
わたしのアソコがお父さんを引き込もうとするようにうごめいた。わたしはゆっくりと腰を動かし始めた。
「ということは……、ぼくは……那由多さんにとんでもないことを……」
Copyright © 2011 Nanamiyuu