第13話 目覚めた少女たち (13)
穂波家の別荘に到着したのはまだ十時前だった。
海が見える丘の中腹にある古民家風の建物だ。リビングらしい板張りの部屋は三十帖ほどもある。見上げると黒くて太い梁が縦横に走っていて、大正浪漫を感じさせた。再生古民家なんだろうけど、あまり使われている雰囲気はない。床はきれいに掃除されていて、十二畳分の畳が敷かれていた。その上に三組の布団が敷かれている。あたしたちのために別荘の管理人さんが準備しておいてくれたのだろうか。
その場に似つかわしくない設備もあった。二台の懸垂マシンだ。こんな別荘に来て筋トレでもないだろう。あたしは懸垂用のバーと天井の梁とを見比べた。これを用意したのが梨沙だとすると……。
梨沙が部屋の隅にあった段ボール箱を運んできた。
「藤堂さん、とりあえずいくらか道具を用意しておいたのですけど」
箱の中にはSM用の高級ロープの束、黒革の手枷足枷、リード付きの首輪、それにバイブレーターが何本か入っていた。
箱から新品のロープを取り出した先生は、強度を確かめるように両手でピンッピンッと引っ張ってみせた。
これからこのロープで縛られるんだという期待が高まった。
「始めようか、ふたりとも」
先生はあたしにブレザーとスカートを脱ぐよう命じた。
あたしの両手首を手錠のように縛って、ロープを懸垂マシンの上のバーに引っ掛けて引っ張った。わずかにつま先立ちになるまで引っ張ると、ロープの端を下のバーに縛り付けた。
やっぱり女の子を吊るための設備だったんだ。天井の梁で吊った方がSMっぽいけど、脚立でも持ってこないと手が届かない。懸垂マシンなら高さ調節もできるし、ロープを結ぶところもある。人間を吊るせるだけの強度も当然ある。
これから何をされるのかと不安なあたしの姿を眺めて、先生は満足げに上着を脱いだ。
ブラウスの上から乳房を揉んでブラジャーをしていないのを確かめると、先生は別のロープを取り出してあたしの上半身を縛り始めた。
あたしの首にかけたロープを体の前で二本に束ね、結び目を一つ二つと作っていく。そのロープを股の下をくぐらせて背中側へ持っていき、首にかけたロープに引っ掛ける。束ねたロープを一本ずつ左右の脇の下をくぐらせて、前に垂らしたロープに引っ掛けてまた背中へ持っていく。それを何度か繰り返し、上半身全体が縛られていく。
これは亀甲縛りだ。
ロープが肉に食い込む感覚。ほっぺたが熱くなってきた。
縛りが完成すると、ロープの余りをバーに括り付けた。先生は結び目を確認するようにロープをあちこち引っ張った。そのたびにロープの食い込みがあたしをさいなむ。
「ん……」
じわじわと快感が湧き上がってくる。
縛られてるだけで、愛撫をされたわけでもないのに気持ちいい。
先生はじっと見入っていた梨沙の方に向き直った。梨沙がビクッとして顔をそむけた。これから自分も縛られると思って、期待と不安でいっぱいなんだ。
梨沙の上着を脱がせ、胸を揉む。梨沙もブラジャーをしていない。
先生は梨沙を背後から押さえ込み、スカートの中に手を入れた。
体をよじって抵抗する梨沙。
はずかしそうにうつむいて震えてる。
感触を確かめるように梨沙の乳房を揉みしだき、股間を愛撫する先生。
梨沙の顔がみるみる上気していく。
その梨沙の顔を上向かせ、先生がキスをした。
梨沙も先生を求めて舌を伸ばし、ふたりが舌を絡めあった。
ふたりのディープキスに胸がズキズキと痛むのを感じた。
どうしてこんな気持ちになるのか分からない。
なんとも複雑な気持ちだった。
藤堂先生はあたしの恋人だ。先生のことが好きだし、現文の授業中は先生のことばかり考えてドキドキしてる。援交の契約上の恋人だけど。
梨沙はあたしの大好きな親友だ。あたしといっしょに先生に誘拐監禁され、いまからレイプされようとしてる。あたしは見てることしかできない。そういう設定だ。
胸の奥で切ない気持ちが渦巻いてる。
本物の恋がどんなものかなんて分からない。あたしみたいな子に分かるはずがない。いまのこのシチュエーションで感じる気持ちが本物の恋なわけない。だいたい、どっちに嫉妬してるというのか。
胸が苦しいのに、それが快感になる。
セックスでイクのは苦しいのにたまらなく気持ちいいのに似ている。
つま先立ちに疲れて気を抜くと、亀甲縛りのロープが全身を締め付けてくる。
その快感に頭がポーっとなってきた。
先生! 先生! あたしにもキスをください。
[援交ダイアリー]
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